2021年1月8日全国公開の映画「大コメ騒動」は、家族を守るために米商人と戦った女性(おかか)たちの群像劇だ。なぜ女性たちは声をあげたのか。主演の井上真央と本木克英監督が語りあった。AERA 2021年1月11日号から。
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1918(大正7)年、日本政府はシベリア出兵を宣言した。軍の食糧確保のため政府が大量に米を買い集めることを見越した米商人らは、先んじて米を買い占める。その結果、米の市価は暴騰する。米不足による生活苦にあえぐ中、富山県の漁村で暮らす女性たちは、米の積み出し停止と適正価格による販売を求めて行動を起こす──。
映画「大コメ騒動」の物語は、103年前に起きた史実、「米騒動」に基づいている。
■働くシーンに躍動感
本木克英監督(以下、本木):映画の構想自体は、20年前に映画運動家の高野悦子さんから助言をいただいたことがきっかけになっています。
「米騒動」という題材は面白いなと感じたのですが、一方でどうすれば娯楽作品にできるのか悩みました。私自身、富山県の出身ですが、実は「米騒動」は、富山人にとっては誇りたい気持ちがある一方で、大っぴらには語りたくない部分でもあるんですよ。
でも、昨年、香港の市民運動が大きく報じられたのを見て、米騒動には現在の社会問題に通じるテーマがあると改めて感じました。「日本でも103年前に自分たちの生活を守るために声をあげて戦った女性たちがいた」という事実を映画で伝えたいと思って制作しました。
井上真央(以下、井上):私は米騒動については、学校の授業で習った程度の知識しかなかったので、最初はどんな映画になるのか想像もつきませんでした。でも、脚本を読んだら、社会派な部分がありつつ、女性たちが生き生きと行動する様子が描かれていて面白かった! お正月映画らしい、家族で楽しめる作品になったと感じています。