本誌でもこれまで繰り返し報じてきた吉川貴盛元農相と鶏卵生産・販売大手アキタフーズ(広島県福山市)の贈収賄疑惑は、注視すべき展開が続いている。吉川氏は昨年12月22日、衆院議長に辞表を提出して議員辞職。12月25日には東京地検特捜部と広島地検が札幌市の吉川氏の事務所などの強制捜査に乗り出した。
今回、検察が吉川氏の疑惑に切り込めた“ブツ”が、衆院議員の河井克行被告と妻で参院議員の河井案里被告の公職選挙法違反事件の捜査の過程で押収されたアキタフーズ元代表(87)の「手帖」だ。
本誌も2018年と2019年の「手帳」の写しを入手した。手帳には、日ごとに面会した人物の名前が、時間や場所などとともに細かく記されている。アキタフーズの関係者はこう語る。
「手帳は元代表の秘書がいつもつけていた。予定がキャンセルになったり、時間変更になったりした時も、たいていメモしていたと聞いている」
「手帳」を見ると、元代表が吉川氏だけではなく、複数の政治家や農水省の幹部たちと頻繁に会合を重ねていたことがわかってきた。
吉川氏は、18年11月21日に200万円、19年3月26日に200万円、8月2日に100万円の現金を元代表から受け取ったとみられている。東京地検特捜部が任意で吉川氏に事情聴取した際には、「一方的に元代表が現金を置いていった。返すつもりだった」などと話したという。
そこで元代表の手帖をチェックすると、18年11月12日に元代表が吉川氏と面会した記録が残っていた。この時に同行したのが、吉川氏とともに疑惑のターゲットとなっている西川公也元農相だ。西川氏のブログには、農水大臣室で元代表が吉川氏に、家畜を快適な環境下で飼育する国際指針「アニマルウェルフェア(動物福祉)」についての要望書を手渡す写真が掲載されている。
18年11月21日には、衆院農水委員会が開かれていた。「アニマルウェルフェア」について「畜産動物のアニマルウェルフェアに係る今回の勧告を、大臣、どのように受けとめられておりますでしょうか」と質問を受けた吉川氏は、
「生産者の理解を得ながら、アニマルウェルフェアを推進してまいりたいと存じております」
と、養鶏業界の意向に耳を傾ける方針を答弁。「手帳」によれば、この農水委員会の終了後に、
<18:00 吉川大臣祝賀会(東京)>
と記されていた。
「東京都内のホテルで開催された吉川氏の祝賀会の前後に、元代表が謝礼として200万円を渡したのではないか」(捜査関係者)