目標の次に多かったのは、自らの体格や経験年数を穴埋めするための必要な能力だった。村上のようにレシーバーであればブロッカーを志望し、ブロッカーの選手はレシーバーを探すことになる。ポジションの特性もかかわってくる。また、経験が少ない若手選手であれば、ベテラン選手と組むことはすべての経験が収穫につながる。
これらを踏まえて、選手たちは「目標」や「役割」を共有できるパートナーを探す。この探し方においても、選手個々の性格が浮き彫りになると日本代表の清水啓輔((有)N&N corporation/中部土木(株))は言う。
「ペアを変える時期は、シーズン終盤からオフシーズンにかけて。組みたいと思う選手がいれば、いろいろ現状を探ります。周囲の状況を見て駆け引きすることも必要。ペア解消を告げずに、水面下でオファーする選手も少なからず存在します。だからオファーするタイミングも重要で、新しいパートナーを決めるときは慎重に動きますね」
ペアが決まれば、結成当初はどのペアも新鮮な気持ちで何事も受け入れられる相思相愛の関係だ。しかし、次第に目標が遠のいていくと摩擦が起き始める。ビーチバレーはたった2人でボールをつなぐ競技。2人の気持ちのズレはコートで露呈され、他に助けてくれる者はいない。2人の気持ちがぴたりと重ならないと、攻撃にかかわるトス、アタックのコンビプレー、ブロックとレシーブにおけるディフェンスフォーメーションなど歪みが出てくる。砂や風がつきまとう自然環境で行う競技だからこそ、2人そろって環境の変化に対応していく必要があるのだが、2人の間に吹いた隙間風は敵(失点)となって表れる。
前出の清水は言う。
「練習、試合の中にお互いよい所だけではなく、悪い所を指摘し合います。チームの状況が悪くなってくると、その作業は簡単ではありません。相当、お互いに人間ができていないと……。競技を長く続けている選手は、そのコミュニケーションの取り方が上手いですね」
清水が大変な作業と話すのも、たった1シーズンで解散するペアも多いことからもうなずける。日本のビーチバレー史上、7年という最長のペア歴を持ち、アテネオリンピックに出場(パートナーは徳野涼子)した元日本代表の楠原千秋は「解散」についてこう話す。
「長く続くペアが少ないのを見ると、勝てないからなのか、性格の問題なのか、お互い寄り添わなくなるのを見ていると残念です。私自身の考えは、ペアを組んで1年くらいではわからない。また、チームというのは「何年」あれば確立できる、といったものではないと私は思っています。同じ目標に向かって時間を重ねれば重ねるほど、チーム力は上がっていくし、阿吽の呼吸が生まれてきました」