B:儲けたのは日銀と証券会社くらいでしょう。あと、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もか。なかでもコロナ対策として年間のETF(上場投信)の買い入れ枠を6兆円から12兆円に倍増した日銀の儲けが群を抜いているでしょうね。

A:証券会社もコロナ相場で新規口座開設希望者が急増したうえに、ソフトバンクGの1.2兆円売り出しなど、大型ファイナンスが相次いだ影響で引受手数料を稼ぐことができた。うちは昨年3~9月の上期だけで数年分の予算を達成していました。

B:ネット証券も稼ぎましたね。日経平均がバブル崩壊後の最高値を更新した昨年11月以降は、ほぼ毎日、1日当たりの売買手数料収入が「過去最高を更新しました」という社内メールが届きました。

C:要は日銀に買い支えられた歪な相場が続いているだけ。日経平均は昨年1年で4千円近く値上がりしましたが、その構成銘柄を見ると6割くらいは値下がりしました。ソフトバンクGやファーストリテイリングなどの構成比率の高い一部の銘柄が日経平均を釣り上げていただけ。個人投資家に人気のある高配当の銀行や商社、自動車株の大半が値下がりしたんですから、投資が好きで銘柄選定に一家言あるようなベテラン投資家ほど成績は振るわなかったはず。逆に、営業マンの言うがままにAI関連、セキュリティー関連などの投信を購入した個人が稼ぐという残念な相場でした。

B:相場が盛り上がっている、という認識が幻想なんですよね。だって、この7年で3倍以上に値上がりしたナスダックの売買代金が1.5倍になったのに対して、TOPIX(東証株価指数)が倍に値上がりしながら、東証の売買代金は完全に横ばい状態。13年から日銀のETF買いが急増したことを考えると、投資家の商いは減っていると見ていいでしょう。東証は投資家不在の相場なんです。

(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

週刊朝日  2021年1月29日号より抜粋

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