みさき眼科クリニック(東京都渋谷区)の石岡みさき院長が警告する。
「消石灰系のライン材は、漂白剤の『ハイター』が目に入るのと同じくらい危ない。目の角膜が再生できないほどの視力障害を負ったケースもあります。炭酸カルシウムも、弱いとはいえアルカリ性。風で舞った際に目に入らないよう、気をつけて」
消えた「昭和のアイテム」といえば、プールの腰洗い槽と目の洗浄用蛇口もある。腰洗い槽は肌寒い日、“苦行”の代名詞だった。
塩素入りの腰洗い槽は時代とともに、大腸菌で汚染される可能性が知られていった。数十秒のシャワーで同じような殺菌効果が得られ、濾過(ろか)装置付きのプールが各地で増えるようになり、退場を余儀なくされた。
小さい穴つきの蛇口が上を向いた、洗眼用の水道蛇口もいまは昔。
変化の背景には、日本眼科医会の、塩素や排尿やふん便、鳥が泳ぐなどして汚染されたプールの水が角膜に悪影響を与えるとの指摘も大きい。
前出の石岡院長は、研究グループのメンバーとしてこの問題に取り組んでいた。洗眼は戦後の日本でたくさんの失明者を出した眼感染症、トラコーマ予防策の名残だとしたうえで、次のように説明する。
「ゴーグルを装着すれば洗眼の必要はありません。プールや水道水の消毒に欠かせない塩素が、角膜を傷つけることもある」
小学校の学習指導要領には、「水にもぐって目を開ける」という指導例があるが、水泳時には小学生でもゴーグルを着用してほしい。
教科書も変わった。
改めて読むと、昭和世代には驚くことばかりだ。
その象徴的なものは、死後の呼称である「聖徳太子」から、「厩戸王(うまやとおう)」への変更だろう。
10人の言葉を一度に聞き分け、十七条憲法を制定したり、巨大帝国だった隋を相手に“対等外交”を主導したりしたスーパーヒーローだ。
『逆転した日本史』などの著書がある歴史研究家、河合敦氏が話す。
「小中学校の教科書は、学習指導要領の関係から聖徳太子の名称とともにヒーローのままですが、近年の高校の教科書は、政治の主役は推古天皇で、厩戸王(聖徳太子)はその協力者に変わっていた」