一般的には、介護を担うのは50代以上の人が多い。実際に、厚生労働省の「平成22年国民生活基礎調査の概況」を見ても、40歳未満で要介護者と同居する主な介護者は、全体の約3%と低い。しかし、「もっと多く、若い人が介護をしているはず」と指摘する声がある。
介護に関するホームページには、「仕事と夢を追いかけてきたのに、希望が閉ざされてしまった」「お金の相談をしたくても、周りに同じ境遇の人がいないからわからない」という声も見られる。周りに介護経験者が少ないため、相談やグチをこぼす相手もなかなか見つからない。仕事や夢が犠牲になる可能性が高いのも事実だ。現在の不況では仕事も安定せず、金銭的に余裕がない人も多いだろう。
育児・介護休業法では、働きながら介護との両立をはかれるように、「介護休暇」と「介護休業」を企業に義務づけている。「介護休暇」は、通院の付き添いや買い物のために、単発で年に5日(要介護者の家族が複数いる場合は年10日まで)休める制度で、「介護休業」は、対象家族1人に対して通算93日、介護のためにまとまった休みが取れる制度だ。しかし、終わりの見えない介護を考えると、十分な日数とは言えず、制度を利用する人も少なく、実態に沿っていないとの批判がある。また、実際にこの制度を利用できるのは、一部の大手企業に勤めている人に限られるとの見方もある。
23歳から認知症の父を介護し、『笑う介護。』(成美堂出版)の著書もあるライターの岡崎杏里さん(37)は、「若い人の介護は、仕事だけでなく、恋愛や結婚を犠牲にする可能性がある」と指摘する。介護に時間を取られ、出会いのチャンスやデートの時間を失ったり、介護が原因で恋人と別れたりするからだ。
実は岡崎さんも、20代のころ、同じ経験をした。だから1年前に結婚した夫とつきあい始めたとき、父の介護のことをなかなか言いだせなかった。
恋人時代、デートした後に車で送ってもらっても、自宅より手前で降ろしてもらった。その秘密めいた行動は、「バツイチで子どもがいるのかもしれない」と疑念を抱かせるほどだった。つきあって4カ月、意を決して打ち明けると、若いのに苦労して偉いなと思ってくれたようだった。その気持ちは彼の両親も同じで、結果的に結婚へと、とんとん拍子に進んでいった。
※週刊朝日 2013年4月19日号