「年頃の子のおしゃれは、本来当たり前のこと。ダウン症でも、おしゃれしたって化粧したっていいはず。そんな気持ちを応援したい」

 当然ながら、裏では苦労もたくさん経験してきた。菜桜さんは生まれてから現在まで、手術と隣り合わせで生きてきた。これまで手術は15回。食道に食べ物が詰まってしまうので、3カ月ごとに拡張手術をしている。食べものは慎重に口に入れ、ゆっくりと水分で流し込まないと簡単に詰まってしまう。合併症を患っているので、心臓や目の手術なども経験した。

「こんなに手術する子もそうそういない。親として、ただただかわいそうで……」

 入院や手術が続くと気持ちがめいってしまいそうだが、モデルの活動が支えになっている。入院中は、親子で次の撮影の話をして、今後の楽しみに目を向ける。

 大変な思いもたくさん経験してきたが、菜桜さんの笑顔は周囲を明るく照らす。記者も取材中、その笑顔に心がふっと軽くなった。彼女の目標は、自分だけでなく、他人を笑顔にすることだ。菜桜さんは取材の最後、「みんなが笑顔になれるモデルになりたいです!」と宣言した。

 菜桜さんが歩んできた道は決して平たんではない。そして今後も困難はつきまとうだろう。日本の障がい者モデルへの理解や活躍の場は、まだ限られている。でも、菜桜さんの笑顔が未来を明るく照らしてくれるはずだ。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)

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