フランス映画界の鬼才フランソワ・オゾン監督(55)が、安楽死をテーマにした新作「すべてうまくいきますように」でソフィー・マルソー(56)と初タッグを組んだ。「ラ・ブーム」(1980年)で日本で一大ブームを巻き起こした人気俳優への思いや安楽死について、オゾン監督に話を聞いた。
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ベテラン女優にまだこんな顔があったのか!? 「まぼろし」(2001年)のシャーロット・ランプリング(76)といい、「しあわせの雨傘」(10年)のカトリーヌ・ドヌーヴ(79)といい、見る者にそんな驚きを与えるほど、フランソワ・オゾン監督は、大御所女優たちの新たな魅力をスクリーンに映し出してきた。
新作「すべてうまくいきますように」で初タッグを組んだのは、映画「ラ・ブーム」が世界中でヒットしたフランスの国民的女優ソフィー・マルソーだ。
「ソフィーが『ラ・ブーム』に主演したときは13歳。私は同世代なので、本当に姉妹のように感じていますし、ずっと関心を持っていました。彼女はある人にとっては母のような存在ですし、ある人にとっては娘、あるいは孫のような存在。彼女は、出演作を重ねていく間に、だれもが一緒に年を重ねてきたような(気持ちになる)、フランスではすごく人気のある俳優です」
オゾン監督にとってマルソーは「ずっと一緒に仕事をしたい俳優だった」と言う。
「彼女には実際これまで何回かオファーをしてきたんですが、常に『ノン』と言われていました。というのは、彼女は、テーマやキャラクターと本当に一体化しないと演じられないタイプの俳優だと思うんです。演技で“騙して”映画を作る、といったタイプの俳優ではなく、自分が真実として本当に受け止められないと演じられないというタイプ。自分で何かを組み立てて作り出して演じる、例えばイザベル・ユペールは、自分でキャラクターを造形しきって犯罪者でも怪物でも演じますが、ソフィーはその対極にあります。『すべてうまくいきますように』は、彼女がストーリーに感動したということと、エマニュエルというキャラクターに自己投影でき、自分の両親や家族も投影できることで、『イエス』と言ってくれたんだと思います」