(c)2020 MANDARIN PRODUCTION - FOZ - France 2 CINEMA - PLAYTIME PRODUCTION - SCOPE PICTURES
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 映画は、父の安楽死をめぐってマルソー演じる長女エマニュエルを中心に家族が右往左往する物語。実際、撮影では「ソフィーは自分自身を、とにかくエマニュエルに与えたかのようだった」と監督は振り返る。

「この役はすごく彼女のプライベートライフが反映されてると思います。というのは、(撮影の)数カ月前に彼女はお父さんを亡くしているのです。そういった意味で、彼女自身の感情がこの役にすごく反映されています」

 映画ではすっぴんとおぼしきマルソーの顔に心労がにじむ。コンタクトレンズを外すようなシーンをはじめ、監督が「彼女についてのドキュメンタリーのような側面もある」と言うとおり、見たことのない彼女の生々しい日常が映し出される。オゾン監督はベテラン女優たちからどのように「思わぬ魅力」を引き出すのだろう。

「それは秘密です(笑)。私は撮影対象となる俳優を愛して理解して、その人たちの価値を引き出すことが大事だと思っています。映画を一緒に作るということは監督と俳優の協力関係がなければいけないし、ギブ・アンド・テイクだと思うんです。私は寛大な心で必要なものを与え、俳優からも受ける。それは信頼関係があってこそ成り立つ。今回のソフィーとはそういう信頼関係が築けたと思います」

■“いのち”の側で映画を作りたい

 俳優には「それぞれに適したアプローチが必要」とオゾン監督は言う。それを学んだのは、ベテランから若手まで8人の人気女優を起用したミュージカル仕立てのサスペンス映画「8人の女たち」(02年)だった。

「俳優はタイプによって、それぞれが監督に望むことが異なります。『キャラクターの心理的な説明をがっつりしてほしい』という俳優もいるし、どこに立つかどう動くかその動線だけの説明でいいという俳優もいる。あるいは、キャラクターのことをとことん話したい俳優もいます。だから、それぞれの俳優に応じて順応することが監督の仕事なんだと思いますね」

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