ただ、銀行の遺言信託の手数料は、弁護士や税理士、司法書士に依頼するよりも高額だとされる。例えば、りそな銀行の専用サイトで遺言信託の手数料を見ると、一般型の基本コースで、契約時の手数料33万円、保管料が年間6600円、執行報酬は資産額で違うものの最低でも110万円だ。

 司法書士平成事務所(札幌市)の碓井孝介代表は「銀行の手数料が高いのは、おそらく間接経費がかなりかかっているからではないか」と話す。保管料も毎年とり続ける理由はないという。公正証書で作成すれば、利害関係人の請求で公証役場が何度でも再発行する。遺言執行では銀行口座一つの解約に100万円のケースもあったという。「銀行は資産を持っていることがわかるので、営業をかけているのかもしれません」(碓井さん)

 富裕層ビジネスに詳しい金融コンサルタントの高橋克英・マリブジャパン代表は「日本ではこれまで銀行がお金持ち層にほとんどタッチできていなくて、たいしたサービスもしてこなかった」と指摘する。

 これまでは相続の相談を受けても、最終的には弁護士や税理士の仕事だと思われてきた。ところが超高齢化社会に突入し、銀行が信用力を背景に遺言信託などが収益源になると見るや、活動領域を広げているのだ。

「ブランド好き」が多い富裕層に対して、銀行の看板はビジネスチャンスにもなる。高橋さんは「モノを買うときには、最終的にセールスマンにおされて気持ちよく買いたい。(有名銀行員の担当者に)自分の自慢話を聞いてほしい、という人も多い」と解説する。

 大手金融機関は、お金のあるシニア層の心をうまくつかめるか。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年2月26日号

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