「徐々に」でいいので、気がついたこと、考えたことを言語化してコミュニケーションを取りながら、みんなで掘り下げて考えていけばいいんだと思うんです。そういうところから始めていけば、日本ももしかすると、そのうち北欧の国のように女性も男性も平等な社会になるのかもしれません。でも、バイキングの時代から女性が体力的にも強かった北欧式の男女平等が、果たして日本に適しているかどうかと言えば、正直あまりそんな感じはしませんけどね。とにかく大事なのは価値観の違いを理解し合うためのコミュニケーションでしょう。

■日本に馴染むやり方

池上:だからこそ、「どうしてなんだろう」を、きちんと言語化しなければいけない。知的怠惰に逃げちゃいけないですよね。

ヤマザキ:はい、コロナという危機的状況だからこそ特に、知的に怠惰であってはいけないんだと思うんです。

 いまコミュニケーションでも、どうしてそういうふうに思うのって、相手にもっと掘り下げてもらうための提示をしていくことが大事だと思うんですよ。例えば、ツイッターを見ていると、相手を理解しようと捉える前に、人の気持ちを平気で踏みにじるような暴力的な言葉を簡単に書き込んで悦に入っている人がたくさんいますが、まずは「どうしてそういうことを考えたか、ちょっとお聞かせ願えますか」でいいと思うんですよ。あなたがそういう考え方に至った根源を知りたいんですということを伝えればいいだけじゃないかと。これこそ、すごく日本的な歪曲したやりとりじゃないですか。

池上:日本式ですね。本当にいろんなところを配慮しながらのコミュニケーションで。

ヤマザキ:学んだんですよ。この一年間、日本から身動きができなくなって(笑)。日本には日本人に馴染みやすい民主的やりかたがあるということを。海外に長く暮らしていようと、私も根本的には日本人であることに変わりありませんし、別に西洋至上主義でもなんでもありませんから。

池上:今のように、ヤマザキ式で、どこからそういう考え方に至ったんですかと聞かれると、これまでこうだと思い込んでた人が、あれ、自分の考え方って論理的でなかったなとか、何か一方的で隙があることを自分は言ってたなっていう、そういうふうに気づけるんですよね。

ヤマザキ:同調圧力で、周りがいいっていうから巻き込まれているような人たちには特に、あなたはなぜ、それがいいと思ったのかっていうことと、向き合ってほしいと思うんですよね。

 地球全体の傾向や風潮を睨みつつも、日本という国土で、日本人という国民性に適した方法での言語によるコミュニケーションをとりながら、この社会をどうするのがいいのか、何が最適なのかということを、誰かの意見や社会の流れに身を委ねるばかりではなく、立ち止まって見極める必然性が今のこの時代でこそ必要だと思いますね。

AERA 2021年3月1日号

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