一般的に市販のエンディングノートは、自分の履歴・人生の振り返り、医療・介護など生前に行うものと、葬儀・埋葬など死後に行うものの要望、お金や不動産の処分方法(相続)、取引のある金融機関や加入している保険、クレジットカードなどの備忘録、大切な人へのメッセージといった項目で構成されている。
その中でポイントになるのが「死後事務」である。
死後事務には主に葬儀・埋葬、公的年金・健康保険・公共サービスなどの各種届け出事務、デジタル遺品の消去、家財等の整理・形見分け、訃報連絡、ペットの引き取りなどがある(図表2)。
家族、親族がいれば任せることも可能だが、そうした人がいない場合は放置されたままになる。また、家族、親族がいても具体的な要望、指示がなければ本人の希望が通らないこともあるし、一時的にせよ死後事務にかかる費用を家族・親族が肩代わりする場合も大きな負担になる。
こうしたことを防ぐためには、「ご自身の希望を明確に記録し、その実行を信頼できる人に依頼し、その人に必要な費用や報酬を渡せるようにしておくことが必要です」と黒沢さんは話す。
実際に、書き出して文字にしてみることで、自分の思いや考えの整理にもつながる。自分がやりたいことの発見にも、つながるかもしれない。すべての項目を埋められなくても、まずは一度、書き始めてみてはどうだろうか。
ただし、エンディングノートに法的効力はない。財産について確実に自身の意思を反映したいのなら、エンディングノートの作成と同時に、遺言書作成を検討するのがよいだろう。(文・田中弘美)