超高層マンションの大規模修繕の様子。写真はイメージ。(C)朝日新聞社
超高層マンションの大規模修繕の様子。写真はイメージ。(C)朝日新聞社

 長年マンションに住んでいると定期的にやってくるのが「大規模修繕」だ。足場を組んで防水工事や外壁の補修、塗装などを行うが、12年に1度のペースが一般的とされてきた。それが、一部管理会社が最長18年に1回で済む修繕サービスを発表したことがニュースになった。住民が払っている修繕費の負担も軽くなると期待されているのだが、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「本来は大規模修繕そのものが必要ない」と指摘する。その真意は何か。榊氏が寄稿した。

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 マンションは十数年ごとに大規模修繕を行う、ということが半ば常識のようになっている。

 国土交通省のガイドラインには「大規模修繕(周期12年程度)」という記載があるため、12年ごとに大規模修繕工事を行うことが望ましいと考えられてきたのだ。

 先日、あるマンション管理会社がこれを18年周期に延ばすノウハウを開発した、ということがニュースになっていた。

 私から見ると、何とも茶番めいた話である。

 そもそも、すべてのマンションが「大規模修繕」と称する工事を行う必要はないのである。

 大規模修繕工事、というと多くの人は建物を覆うように足場が組まれ、職人さんたちが外壁を補修する作業をイメージするし、実際にそうした工事を含むケースがほとんどである。大規模修繕工事で最もコストがかかるのは、この足場を組むこと、そして工事後に解体する作業なのである。
 しかし、そもそも外壁の補修は何のために行うのか?

 端的に言えば、それは外壁の劣化による雨漏りを防ぐためである。では、築12年のマンションが雨漏りする可能性がどれほどあるのだろうか。

 これに関する確実な統計データは存在しない。しかし、築20~30年、あるいは40年以上が経過しても外壁からの雨漏りがまったくないマンションは珍しくない。もちろん、その間に一度も外壁の補修工事を行わなくても、である。

 仮に、築12年で外壁から雨漏りするようであれば、それは施工精度が著しく低いと見なすべきである。むしろ施工不良に近い。

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管理会社が工事内容を「盛って」くる