ニューヨーク(写真提供/吉本興業)
ニューヨーク(写真提供/吉本興業)
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 お笑い業界では「同業者に支持される芸人は売れる」という定説がある。プロの芸人の目から見て面白いと思えるような芸人は、確かな実力を持っているので、遅かれ早かれそれが認められて世の中に広く知られるようになる、と言われてきた。

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 嶋佐和也と屋敷裕政の2人から成るお笑いコンビ・ニューヨークは、2010年の結成以来、玄人筋からの評価が高い芸人だった。芸人や業界関係者の間ではその実力が認められていて、早い時期から「ネクストブレーク芸人」と呼ばれていた。2013年に始まった若手芸人の登竜門的なバラエティ番組『バチバチエレキテる』(フジテレビ)のレギュラーにも選ばれていた。

 だが、そこでブレークを果たすことはできず、番組は半年で打ち切りに。その後、ニューヨークは長い低迷期を過ごすことになった。相変わらず同業者には評価されながらも、世に出るきっかけをつかめないまま時間が流れていった。

 初めて光明が見えたのは、2019年の『M-1グランプリ』で決勝に進んだことだった。結果は最下位だったものの、審査員の松本人志に酷評されて、すかさず屋敷が「最悪や!」と切り返したくだりが評価され、一気に注目度が高まった。

 このとき彼らが披露したのは、嶋佐が自作のラブソングを歌い、屋敷がその歌詞にツッコむという漫才である。実は「流行りのJ-POPにありがちなダサい歌詞」に対する悪意も含まれているのだが、それを前面に出さず、単なる自作の変な歌を聴かせるネタというふうにも見えるところが画期的だった。悪意を上手く隠す技術を身につけたことで、彼らの面白さがより多くの人に伝わるようになった。

 2020年の『キングオブコント』では準優勝を果たし、その年の『M-1』でも再び決勝に進んだ。コンテストで結果を出したことで、ようやく彼らにスポットライトが当たり始め、テレビの仕事も増えていった。

 バラエティ関係者の間では、ニューヨークの実力は認められていて、ぜひとも起用したい存在ではあったのだと思う。だが、テレビでは「その人を起用する理由」が求められる。今までは、見た目もキャラも普通っぽい彼らを、あえてキャスティングするきっかけがなかった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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ニューヨークの芸人としての売りは「皮肉屋」