■マンボウ的魅力
志摩マリンランドは都心から行くには少し遠いが、賢島駅から徒歩2分で到着できるので電車一本で行ける。私が実感した同館のマンボウ的魅力をご紹介しよう。
入り口に辿り着く前に君臨する、エクスカリバーの如く地面に突き刺さる巨大なマンボウのモニュメントを見れば、必ず記念写真を撮りたくなるだろう。このモニュメントはG7伊勢志摩サミットに合わせて2016年3月1日につくられ、全長約330cm、全高約330cmで、日本で捕獲されたマンボウの最大記録をモチーフにしたとの話だが、そのサイズは実際ウシマンボウのデータだったと思われる。
しかしながら、モニュメントは舵鰭に波型があり、頭部と下顎下が隆起していない点で、多少デフォルメされてはいるがマンボウの形態的特徴を有している。11時前までに着けば、このモニュメントと太陽を同じフレームに入れて写真を撮ることが可能だ。このモニュメントが取り壊しになるかどうかはまだ未定とのこと。面白いのが、うちで飾りたいから欲しいとの問い合わせが数件あったそうだ。私も将来マンボウのお店を開きたいと考えているので壊すくらいなら収集したいところだが、家に置くにはデカすぎる……。
同館のメインスポットはやはりマンボウ館の大水槽!横長で2側面からマンボウや他の魚を観察できる。水槽前に手すりがあるので、忙しなく泳ぎ回るマンボウのタイムラプス動画を撮影することも可能だ。水槽近くにはレトロな雰囲気を漂わせた同館オリジナルのマンボウの記念メダル販売機もある。
私が訪問した2021年3月17日時点では4個体のマンボウが飼育されていた。飼育個体のうち、特に注目してもらいたいのが、背鰭後部が欠損している個体だ。背鰭後部の欠損は捕食生物に襲われたものと推測されるが、他の個体と見比べるとこの個体は背鰭と臀鰭が短い。この鰭の短さは先天的な奇形と思われた。生きているマンボウの奇形個体なんてなかなか見ることはできないので、是非注目して観察してほしい。餌やり時間は朝と昼の2回。告知はしていないため、見たい人は受付や職員に聞くのが確実である。
お土産コーナー、飲食コーナーなど、館内のあちこちにマンボウのイラストや作品が展示されているので、それを探すのも楽しいだろう。緊急事態宣言が全国的に解除されたこれからはますます混雑すると予想される。密にならないよう入場制限されることもある程度覚悟して、最後の一時を楽しんでほしい。
【主な参考文献】三橋静雄.1980.マンボウ飼育実験.志摩マリンランドクォータリー.(26): 2-3.
窪田毅.1981.新館開館にあたって.志摩マリンランドクォータリー.(27): 4.
●澤井悦郎(さわい・えつろう)/1985年生まれ。2019年度日本魚類学会論文賞受賞。著書に『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書)、『マンボウは上を向いてねむるのか』(ポプラ社)。広島大学で博士号取得後も「マンボウなんでも博物館」というサークル名で個人的に同人活動・研究調査を継続中。Twitter(@manboumuseum)やYouTubeで情報発信・収集しつつ、今年4月以降もマンボウ研究しながら生きていくためにファンサイト「ウシマンボウ博士の秘密基地」で個人や企業からの支援を急募している。