医学博士で管理栄養士の本多京子さんは、食材を冷凍保存して上手に利用する達人。さまざまな食材をストックして日々の料理に取り入れているそうです。冷凍食材を使えば、医学博士や管理栄養士の視点からも栄養バランスの取れた食生活が可能になるといいます。その活用法は、一冊の本(『シニア世代の食材冷凍術』講談社)にまとめることができるほど。食材を上手に冷凍保存するためには、押さえておきたいポイントがあり、解凍後の使い勝手やおいしさに大きな差が生まれます。本多さんに冷凍術を教わりました。
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「栄養バランスを取るためには、1食に数種類の食材を摂ることが有効ですが、残った食材を使いきれずに、ダメにしてしまうこともあるでしょう。コロナ禍では、買い物に行く回数も少なくしたいものですよね。そんなことを解決するためにも、食材の冷凍保存は便利です」
また、保存するときに、切る、加熱するなどちょっとした下ごしらえをしておくことで、使うときの料理時間の短縮に役立ちます。ただ、むやみに冷凍すると、食感が変化したり、風味が損なわれたりして「おいしさ」が半減してしまいす。
冷凍することで、食材にどんな変化が起こるのでしょうか。まず基本原理を覚えておきましょう。本多さんは、次のように説明します。
「冷凍は“水の科学“です。食品の中の水分が凍ることで、栄養やうまみを閉じ込めているのです。冷凍は食品の細胞の中にある水分が凍った状態です。細胞中の水分は凍ると体積が増えるので、細胞膜を傷つけるのです」
細胞が傷つくと、解凍時に栄養素やうまみが水分とともに流出します。これがドリップと言われるもの。また水分が流れ出ると、歯ごたえが悪くなったりスカスカなったりして、食感が冷凍する前とは違ってくるのです。
しかし、この変化を逆に活用すれば、調理が楽になったり、味付けも上手に行ったりすることができます。
「解凍した食品は、水分が流れ出して中がスポンジ状になるため、加熱すると火の通りが早く、だしや味が浸透しやすくなります。例えば玉ねぎは、冷凍と解凍によって水分が流出すると早く火が通るため、“飴色玉ねぎ”も時短で作ることができます。魚や肉は、冷凍する前に塩をふって脱水させ、調味料とともに冷凍すると味が染み込み、解凍してすぐに調理をすることができて便利です。こうしたことを知っておくと、冷凍食品の利便性がグッとアップします」