※写真はイメージ(gettyimages)
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AERA 2021年4月19日号より(イラスト:佐藤ワカナ)
AERA 2021年4月19日号より(イラスト:佐藤ワカナ)

 ランドセルの購入は、年々時期が早まり、価格は10年で1.5倍に。過熱するラン活の波に乗れず、モヤモヤした思いや疎外感を抱く人も少なくない。AERA 2021年4月19日号で取材した。

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 3月上旬のある平日の午前10時。いよいよ来年入学する娘が欲しがっているランドセルの展示会の予約が始まる。横浜市に住む女性(43)は予約開始時刻前にブランドのウェブサイトを開いて展示会の予約フォームのページを表示し、しばらく待った。10時になると同時にフォームをクリックし、素早く名前や電話番号などを入力して「予約完了」をクリックする。次のページで無事予約が取れたのを確認すると深いため息が漏れた。少しして、もう一度予約フォームのページを開くと、予約枠はすべて埋まっていた。

 展示会では娘の本命の茶系のランドセルを試着。店員から「人気色はゴールデンウィークまでは残らないかも」と聞き、その場で購入を決めた。価格は7万3千円。まだ3月半ばだった。

 2022年度入学の子どもたちのランドセル争奪戦は、入学まで1年以上もある3月に最初のピークを迎えた。希望のランドセルを購入するための活動は近年「ラン活」とも呼ばれ、ヒートアップ。年々平均価格は上がり、時期も早まっている。

■支払いは6割祖父母

 メーカーで構成するランドセル工業会によると、20年のランドセルの平均価格は5万3600円。10年の3万5千円からこの10年間で1.5倍以上になった。同会の調査だと、購入金額を払ったのは61%が祖父母だ。

 早期化は総務省の家計調査(二人以上世帯)を見ると明らかだ。1世帯当たりの通学用カバンの月別支出金額は07~09年度は入学前の年明け以降の1~3月が多かったが、12~14年度は10月がピークに。17~19年度は7月が最も多く、次に帰省シーズンの8月。5月にも小さなピークができていた。

■我慢ばかりの中の望み

 今年はそれが一段と早まった。新型コロナウイルスの影響で会場の混雑を避けるため、特に人気メーカーは試着する機会を「完全予約制」とし、一度に来場する人数も絞った。人気ランドセルを確実に手に入れるためには、子どもが年中の年末年始頃にはカタログを請求し、ほしい商品を見定め、各メーカーが販売を始める3月に購入した人も多かった。冒頭の女性は言う。

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