そして迎えた4月17日、「ロースコアの展開になるだろう」と予想されていた通り、壮絶な投手戦が繰り広げられた。相手先発は、球界に誇る左腕のエース、クレイトン・カーショー。ダルビッシュとはドジャース時代にキャッチボールのパートナーを務めるほどの仲の良さで知られていた。しかし、ダルビッシュがライバルのパドレスに移籍して以降は連絡を控えているというほど、カーショーもまた相手を意識し試合に臨んだ。

 ダルビッシュとカーショーは初回から互いに相手打線を封じ込めた。両者ともに素晴らしい立ち上がりをみせたわけだが、特にダルビッシュについて、「ドジャース主力選手があれほど苦戦を強いられるとは正直予想外でした」(スミス記者)、「あの投球こそまさにダルビッシュの真髄です」(エース記者)と両軍の記者は高く評価した。

 ゼロ封が続いた試合は4回裏に動きだした。パドレスの5番プロファーのバットがキャッチャーミットに当たり、捕球妨害を受けるシーンがあった。これにカーショーは激怒し、あわや乱闘かと思われる一触即発の雰囲気が球場全体を覆った。そして5回表、ダルビッシュは2アウトから死球、ライト前ヒット、四球で満塁のピンチを迎えたところで9番、投手カーショーと対決する。前の回からの怒りが収まらないカーショーは、フルカウントから8球粘って四球を選び、押し出しで1点をもぎ取った。ダルビッシュはその後の2イニングを21球で抑えるほど立ちなおしたが、「5回の展開は不運だった」とエース記者が語るように、その後も味方の援護を受けられず、7回98球で降板した。

 それでも、ダルビッシュは試合後の会見で、「あの打線にあれだけの投球ができたので、負けたのはすごく悔しいですけど、自分の中では自信になった」と自身の投球に手応えを感じていた。パドレス側のエース記者も「まさにパドレスが求めていたエースそのものだった」と高く評価した。そして、ダルビッシュは敵軍の記者もうならせた。ドジャースを取材するスミス記者は「今日のダルビッシュは私がこれまで見た中で最高の内容だった」と称賛し、「今回こそドジャースが勝ちを得ましたが、ダルビッシュが厄介な相手であることを改めて思い知らされました」と述べる。この試合は結局、ダルビッシュ対カーショーのエース同士の戦いで、相手の執念に負けたとも言える。

 だが、ダルビッシュとドジャースの対戦はまだ始まったばかり。直接対決は5カードも残っている。ダルビッシュは次戦もドジャース戦でカーショーとの投げ合いが予想されている。しかも今度は、あのドジャース本拠地での試合になる。ドジャースファンがどのようなリアクションを起こすかはまだわからないが、過去の因縁は、今は最大のライバルとして立ちはだかる。ドジャース戦は、今季ダルビッシュが登板する試合の中でも最も熱いものになることは間違いない。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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