二階氏はその後、「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で申し上げた」などと五輪中止発言の趣旨を説明 (c)朝日新聞社
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 二階俊博・自民党幹事長の東京五輪・パラリンピック中止に関する発言で 永田町に激震が走った。その真意はどこにあり、本当に五輪は開催できるのか。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号から。

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 菅義偉首相とバイデン大統領による日米首脳会談後の会見では、これまで菅首相が多用し、今年の施政方針演説でも高らかに宣言した「(五輪開催は)人類がコロナウイルスに打ち勝った証し」という文言が「世界の団結の象徴」に変わった。

 自民党のベテラン議員の一人は、今後、本当の意味での五輪開催の可否が、菅政権と解散総選挙の命運を握ると断言する。

「規模縮小であっても、五輪を開催できたことを成果に、五輪後に解散するというのが菅さんのベストシナリオ。しかし、7月23日の開会がIOCとの関係でできないと事前に分かれば7月4日の東京都議会議員選挙に総選挙をぶつけるでしょう。投票所の確保、国内のコロナの感染状況もあるので6月初旬には結論を出さなければなりません」

■世論の風を見極める

 自民党の二階俊博幹事長らが「五輪中止論」に言及した件を尋ねると、この議員は笑ってこう断言した。

「完全なブラフで世論の反応をみている。政権内、いや自民党内で本気で五輪中止に言及できる人はいないでしょう」

 とした上でこう続ける。

「ただ都議選を控える小池百合子東京都知事に限っては、できないと分かった瞬間に、政府よりも先に中止を切り出す可能性がある。その上で自民党と手打ちをするのか、日本維新の会など野党の一部と連携するのか。菅さん同様、五輪を政局にして、自分の政治家としての生き残りをかけた戦いに出るでしょう。開催か中止か。それこそ、世論の風を見極める能力だけにはたけていますから」

 21日、オンラインで記者会見したIOCのトーマス・バッハ会長は、「(緊急事態宣言は)時期を限定した対策と聞いている。ゴールデンウィークと関係しているもので、東京五輪とは関係ない」と発言。立憲民主党・辻元清美議員は、それでも五輪開催を強行しようとする菅首相にこう釘を刺している。

「IOCや組織委員会は、日本国民の命や暮らしを守る責任はないんです。国民の命を守る立場に立てるのは、その中では日本政府だけなんですよ」

(編集部・中原一歩)

AERA 2021年5月3日号-5月10日合併号より抜粋

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