森山記念病院(提供写真)
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森山記念病院間脳下垂体センター長の山田正三医師
森山記念病院間脳下垂体センター長の山田正三医師

 脳腫瘍は種類や大きさによって治療の時期や内容が変わってくる。新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって治療が遅れてしまうと、命に関わるおそれもある。このような状況下、手術数トップの病院はどのような対応をおこなってきたのだろうか。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で脳腫瘍手術が全国1位となった森山記念病院(東京都江戸川区)の間脳下垂体センター長を務める山田正三医師に話を聞いた。

【図解】脳腫瘍手術の治療の選択の流れはこちら

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 脳腫瘍はできる場所や状況によって、治療方法や治療を開始する時期も変わってくる。進行の遅い良性腫瘍などはすぐに手術が必要でない場合もあるが、症状があり進行の早い悪性腫瘍では、一刻も早く治療を開始することが重要になる。

 いまだに猛威を奮い続けている新型コロナウイルス感染症。2020年第1波のころは、どのような状況だったのかを山田医師はこう述べる。

「2020年の1、2月ごろは、まだ予定通りに手術していたケースが多かったです。しかし、第1波となる3、4月ごろは、手術数自体は減りませんでしたが、手術を延期した患者さんも少なからずいました」

 手術の延期については、患者と病院でそれぞれの事情があったという。

「患者さんとして、病院に来るのを控えるケースがありました。例えば、当院は遠方から手術に来られる人も多くいますが、地方の人は特に、『コロナの感染者が多い東京へは怖くて行けない』という場合や『ちょっと今は病院へいくのが怖い』という人もいました」

 第1波のころは、全国各地の医療現場においても、コロナに対応するうえで不明な点も多く、適切な対応がままならなかったのも実情だった。

「当初は、どう対応すればいいのかがわからずに、右往左往していた印象ですね。当院はコロナの協力病院でも感染症指定病院でもありませんでしたので、最初のころは患者さんにPCR検査をすることもできませんでした」

 各学会からも「基本的には不急の手術は延期すべし」という提言が、次々と出ていた。

「手術を延期してお待ちいただいた患者さんのなかで、待機中に急激に腫瘍が大きくなって、下垂体卒中といって下垂体腫瘍に出血する症状を起こしてしまい、急性副腎不全と意識障害で、他院に緊急入院してもらったというケースがありました。その後、事なきを得たのでよかったのですが、このような不測の事態を、この間、経験したという人は、ほかにも多くいたのではないでしょうか」

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スタッフは2週間に1度PCR検査