そうバッサリと指摘するのは、同社CMOの飯高悠太さんだ。優しい声色で、何十万人というフォロワーに目がくらんだ筆者に現実を突きつける。

「メディアの情報を公式SNSでわざわざ取得する理由がないんです。AERAを読みたければ、雑誌を買えばいいじゃないですか」

■公式より「個」を立てる

 近年、SNSは細分化が進んでいる。好きなアイドルファン同士でつながる「オタクアカ」に、就活の悩みを書く「就活アカ」。人によってさまざまだが、画面の向こうにいる誰かとのコミュニケーションが目的であることも多い。それゆえ、友達同士の会話に、企業が入る余地はほとんどないという。

 そこで、飯高さんが提案するのが、「個」を立てること。

「ホットリンクもそうで、社名を聞いてもピンとこない人が多い。だから、僕たちは社内メンバーのアカウント基盤を作っています。SNSにいるメンバーを通して、社員同士の関係性や会社の魅力が人間らしい形で伝わっていくんです。記者にファンができれば、その人の記事を読むために雑誌を手に取りたくなりますよ」(飯高さん)

 ツイッターで筆者個人のフォローリストを確認すると、思った以上に「人」ばかりだった。仕事で使うメディア関連のアカウントを除いて、企業の公式は「じゃがりこ」ぐらい。ホットリンクの存在を知ったのも、同社社員のツイートだった。

 編集部にも、ツイッターを活用する記者が何人かいる。ただ、取材依頼を送るために使っている人が多いようで。記事は饒舌に書いても、どうやらSNSでは口下手らしい。

「個」を立てるからといって、公式がいらないかといえば、そういうわけでもないという。飯高さんはこう続ける。

「一緒に企画を考えようと読者に投げかけたり、表紙で見たい人を教えてもらったりとコミュニケーションをとってみてください。反応がなかったらと気にする方もいますが、タイムラインは1日もあれば流れていきます。積み重ねのないところに反応はありません」

 コミュニケーションという部分で、SNS運用に悩む人がハマりやすい失敗がある。ウェブサイトを更新する感覚で、一方的なお知らせに終始してしまうケース。ユーザーが入る余地を残さないのは、SNSではご法度なのだ。

 ここまで聞いて、我が身を振り返る。時間がなかったり、疲れていたりすると、つい「お知らせ」になりがちなんだよなー。もらったアドバイスを反芻すればするほど、過去の投稿が走馬灯のように流れていく。あるインフルエンサーは、1枚の写真を投稿するのに5、6時間かけるって言ってたっけ。忙しいって言ってやらないうちは、本気で改善するつもりがないってことだよなあ。

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