甲状腺がんはステージIIIまでなら5年生存率(治癒率)はほぼ100%であり、「治りやすい」ことで知られる。ただ、手術で甲状腺を摘出することで、甲状腺ホルモン薬を生涯のみ続ける必要があるなど、長期にわたるケアが欠かせない。新型コロナの影響で受診控えもみられるようになってきた。このような状況下に、手術数トップの病院はどのように対応しているのか。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、甲状腺がん手術数が全国1位となった甲状腺疾患専門病院である隈病院の副院長・宮章博医師に話を聞いた。
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隈病院の甲状腺がん手術数は、全国1位となった2019年の1033件から、コロナの感染が始まった20年には917件に減少した。その背景を宮医師は次のように見ている。
「甲状腺がんの治療の多くは、ほかの病気のために受診した際や、職場や自治体の健康診断を受けた際の医師による首の触診や超音波検査などで『がんの疑い』が見つかるところから始まります。患者さんはその後、当院のような専門病院や大学病院、がんセンターなどを紹介され、専門的な検査を受け、甲状腺がんの診断が確定したら治療を始めることになります。このため、コロナで受診控え、健診控えが広がったことで、当院に紹介される件数も、その後の手術数も減少したと思われます」
紹介される件数が減ったことから年間の入院患者数は19年の2028人から20年は1852人に減少した。予定していた入院日の直前に「発熱した」と連絡があった患者には、1カ月ほど入院日を延期して対応した。
入院の際は、まずPCR検査を受けてもらい、陰性を確認してから手術のための検査をおこなうようにしている。この入院時のPCR検査で陽性だったケースはない(21年4月時点)。
また、隈病院に患者を紹介する医療機関や健診機関だけでなく、隈病院自体への受診控え、すなわち外来患者の減少も第1波、第2波のときからすでに確認されていた。年間の外来患者数は19年の18万1405人から、20年は16万4140人となった。