「各装備の有効性を本当に吟味して内容を決めたのか。予算規模ありきだとしたら、戦前の臨時軍事費特別会計を彷彿とさせます。自衛隊には人員不足の問題もあり、装備だけを増強すればいいわけではない。日米同盟は絶対に堅持しつつも、対立する米中両大国が突然手を握った場合でも対応可能な対中国外交や、東アジア諸国との関係強化など、さまざまな戦略を検討していく必要があります」(小黒氏)

「60年償還ルール」の見直し案については、松野博一官房長官が「財政に対する市場の信認を損ねかねない」と問題を指摘。安倍派を中心に、増税反対を主張する議員たちからは反発も起きている。国民の理解どころか自民党内でも議論が紛糾しているこの体たらくに、防衛庁長官を務めた山崎拓自民党元幹事長はこう苦言を呈する。

「43兆円という防衛予算の中身の議論が伴っていない。反撃能力と表現しているが実際は敵基地攻撃能力で、それを持つということは軍事大国にならず専守防衛に徹するというこれまでの防衛政策を大転換することになる。これは憲法9条の解釈を超えた問題で立憲主義に反します。大幅な防衛費の増額をするのであれば、まずはきちんと国民的議論をしたうえで、憲法改正を実現してから行うのが筋です」

 なし崩しは許されない。(本誌・佐賀旭)

週刊朝日  2023年2月10日号

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