日本球界はひとごとと思わないほうがいいだろう。アトランティック・リーグは、大リーグで新ルールが導入される前の実験が行われる舞台として知られる。日本野球機構(NPB)も大リーグの影響を受けて2018年から「申告敬遠」を導入し、「ワンポイントリリーフの禁止」も検討している。

■投手がかわいそうの声

 日米で現役時代にプレーしたある投手は、ダブルフックDH制についてこう理解を示す。

「野球は戦略性が高いスポーツ。良い選手をそろえたチームが勝つわけではない。このルールを導入すれば監督の采配力が問われておもしろいと思う。検討の価値は十分にあります」

 だが、バッテリー間の距離を延ばすことに関しては「絶対反対です」と語気を強めた。

「31センチ距離を延ばすことで、打者が圧倒的に有利になります。直球の体感速度が変わり、変化球も見極められるようになる。ボールがホームベースに到達したときの速度が遅くなれば、打球の初速も遅くなるので本塁打数は減るかもしれませんが、投手は三振を取ることが難しくなる。米国は『本塁打か三振か』の大味な野球が進んでいるのでファン目線で改革に乗り出したと思いますが、やっている選手からすれば選手生命に大きく関わるルール改正になる。大リーグで導入されれば、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などの国際試合でもルールが変わる可能性があります」

 現役選手からも否定的な声が聞かれた。

「このルールが採用されたら投手がかわいそうですよね。三振を取るパワーピッチャーは不利になるし、打たせて取る技巧派の投手も31センチ距離が延びたら、打者が変化球に対応できるようになり苦労するでしょう」

 実際に二つの新ルールが導入されることで首脳陣、選手、ファンはそれぞれどう感じるか。動向が注目される。(ライター・梅宮昌宗)

AERA 2021年5月24日号