ふたりは、アトランタ五輪で知り合い電撃的な結婚をした。王室は、彼の人となりも見極めないままに迎え入れ、ふたりに一代限りの公爵の称号を与えた。だが、国王の義兄は信頼を裏切る。実業家となったウルダンガリンは、本人が会長を務める財団など通じた脱税や背任で、約600万ユーロ(約8億円)の不当利得を手に入れたとして2018年に、首都マドリードから100キロ離れたブリエバ刑務所に収監された。

 高い支持率に支えられてきたスペイン王室だが、スキャンダルにまみれて威信は地に落ちている。前国王ファン・カルロス1世(83)は、世界自然保護基金(WWF)スペインの名誉総裁を務める身でありながら、アフリカの地で愛人同伴で象狩りツアーの接待を受けたことが露見して、退位に追い込まれた。長男のフェリペ6世に王位を譲ったが、スキャンダルが明るみに出る。

 国王ともなると手にする金額の桁が違う。在位中にサウジアラビアでの高速鉄道建設計画に絡んで、スペイン企業やスイスの隠し口座を使ってサウジから不正なお金を受け取ったとして、捜査当局が動いた。

 さらに、サウジの故アブドラ前国王から1億ドル(約106億円)を受け取り、愛人に6500万ドルを贈った疑惑も浮上。ちなみに愛人は、スイス当局の調べに対して、「愛情から贈られた」と認めている。追及が渦巻くなか前国王は、2020年にカリブ海のドミニカ共和国に「亡命」。

 コロナ禍になるとワクチンスキャンダルが追い打ちをかけた。今年3月、現国王の姉ふたり、エレナ王女(57)とクリスティーナ王女は、国内ではワクチンの接種対象になっていないのに、優先してワクチン接種を受けことが暴露された。ふたりの王女は、父親カルロス前国王が長期滞在するアラブ首長国連邦を訪ねた機会を利用して接種。横領や金銭スキャンダルにまみれた王族の、優先接種に、国民の怒りはおさまらない。大スキャンダルに発展した。

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デンマークは生活のためにモデルをする王子