韓国文化のパラダイス、東京・新大久保で子どもを幼稚園や保育園に預けた「ママ友」が朝から行う「モーニング宴会」がはやっているという。そして、興味深いのは、店ではなく、「店員の常連」、つまりファンもいるのだ。会場のうちの一つ「おんどる」でその実態を取材した。

 店長の常連さんは取材中には現れなかったが、席待ちで並ぶママ友グループに話を聞くことができた。その中の三浦君枝さん(仮名)は言う。

「特に韓流ファンというわけじゃないけど、ここはイケメンが多いんでたまに来ます(笑)。料理も安くておいしいし、お酒も飲めるからブランチには最適なんです」

 お子さんは?の質問に、「みんな保育園に預けてから来るんですよ。そもそも保育園で知り合ったママ友ですし」。彼女たちは保育園や幼稚園に子どもを預けて、迎えに行くまでの午後2時、3時ぐらいまでモーニング宴会で過ごしているのだ。

「一人でお昼食べるのも退屈だから、自然にママ友と食べるようになって、どうせ食べるならいろんなところで食べようとなって、さらにどうせなら軽くお酒が飲めるところがいいなって。迎えがあるから、そんなに飲みませんよ(笑)」と三浦さん。

 ランチタイムにランチビール程度なら普通だが、午前中から夜と同じように飲める店は少ない。あったとしても若い女性が宴会は少ないだろう。ましてや、東京広しといえど、朝からマッコリを飲める店があるのは、さすがに新大久保ぐらいではないか。

 筆者も経験があるが、新大久保はもともと朝から飲める街であった。ただしそのころは、立ち飲みや汚い居酒屋が多く、飲んでいるのも夜勤明けの人か、朝から飲みたいアル中気味のオジサン。女性客などいるわけもなく、もちろんイケメン店員など皆無だった。

 しかし、多少なりとも、過去にそういう土壌があったからこそ、いまの新大久保がある。三浦さんが言う。

「新大久保って街全体が外国みたいで、異国情緒いっぱいでしょ。だから昼から飲んでても罪悪感がないのかも。みんな、海外旅行中なら、お昼から飲むじゃないですか」

 なるほどここは日本であって、日本でないコリアンタウン。そんな街の素性も、ママ友たちにとって、モーニング宴会しやすい場所となっているようだ。ひとりの若いママが、筆者にささやいた。

「大きな魅力のひとつは、新大久保の昼は、日本人サラリーマンが少ないことです。だって、会話の8割は、だんなの悪口ですから。隣にいれば、他人のだんなでも気をつかうでしょ」

週刊朝日 2013年7月5日号