「世界遺産」として注目を集める一方で、東日本大震災以降は不気味な「兆候」をみせている富士山。もし噴火した場合、その火山灰は首都圏にまで及び、甚大な被害を与えるという。

 火山灰は目や皮膚にも大きな被害を与える。外出する際は、火山灰に触れないようにしたい。

「火山灰は非常に小さなガラス片が大量に含まれています。目に入ると、角膜を傷つけて炎症を起こします。外出する場合はゴーグルを着けてください。コンタクトレンズを使っている方は必ず外してください。また、皮膚に付着すると炎症を起こすので、長袖のつるつるしたレインコートなどを着用しましょう」(災害医療に詳しい国立保健医療科学院・健康危機管理研究部の石峯康浩氏)

 火山灰の影響はそれだけではない。仮に都内で2センチ積もったとしよう。雪から連想して、それぐらい大したことがないと思われる読者も多いと思うが、実はライフラインがほぼ壊滅すると予測されている。

 まず、電気が止まってしまう。火山灰が送電線に積もると、その重みで送電線が切れる。雨でぬれた火山灰は電気を通すようになるので、変電設備などがショートする。

 交通も寸断されてしまうだろう。道路に2センチも火山灰が積もれば、車はスリップしてコントロールが利かなくなる。エンジンのフィルターも目詰まりを起こし、動かなくなる危険もある。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏はこう指摘する。

「自家用車は放棄したほうがいいでしょう。雪道などで使うタイヤチェーンを使っても、火山灰の上ではスリップしてしまう。タイヤチェーンは、凍結した硬い路面では滑り止めになるが、火山灰が積もって雨にぬれた柔らかい路面ではほとんど効果がありません」

 さらに深刻な影響を受けるのは上下水道だ。特に、下水道はダメージが大きい。火山灰はぬれると固まる性質がある。路面の下水溝にぬれた火山灰が流れ込むと、排水機能がまひする。上水道も、浄水場の設備が壊れる危険が指摘されている。

週刊朝日 2013年7月5日号