インド五輪委が、新型コロナウイルスの感染対策で特定の国から参加する選手の行動規制を強める方針を示した東京五輪・パラリンピック組織委員会に、「不公平で差別的だ」と反発する文書を送った。インドの複数のメディアが20日に報じた。
現地のメディアによると、インド五輪委は、選手たちはすでにワクチンを接種済みで、来日前の7日間に毎日PCR検査を受けるなど十分な対策を講じるとして、「日本への入国が認められるのは競技の5日前で、直前の調整しかできない。これでは競技に臨む選手に不利に働く」と規制が厳しすぎることを訴えた。五輪憲章は「いかなる種類の差別も受けることなく、スポーツをする機会を与えられなければならない」と定義している。
一般紙の運動部記者は「インドの主張も一理あります。そもそも、五輪はウイルスが世界中で感染拡大している状況での開催を想定していない。組織委員会は感染をできるだけ抑えたいという思いで行動規制に踏み切っていますが、行動規制された国からすれば差別されているように感じる。インド側も引き下がれないでしょう。五輪参加をボイコットするような事態にならなければいいですが……。他国もインドと同様の訴えを起こす可能性があり、予断を許さない状況です」
コロナが世界中で猛威を振るい、死者数は380万人を超えると言われている。ここまでウイルスが感染拡大している中で、大規模なスポーツイベントを開くことは過去にも例がない。1920年にベルギーのアントワープで開催された五輪も、2年前にスペイン風邪が欧州で大流行していたが、東京五輪とは状況が異なるという。
「多くの文献によると、スペイン風邪は1920年の五輪前に欧州全体で感染が収束していることが確認できます。アントワープ五輪の参加国・地域数は計29で欧州の国が大半。参加選手も2607人と東京五輪よりはるかに小規模です。スペイン風邪が蔓延したアントワープで開催できたのだから、東京五輪でも開催できるというのは詭弁です。東京五輪は人流、物流の規模が当時と全く違うし、コロナと一口に言っても様々な変異株があり、ワクチンが効かない恐れもある。いくら水際対策をしても感染爆発のリスクは消えない。五輪開催はそれほどのリスクをはらんでいるんです」(前出の運動部記者)