50代の専業主婦や、労働時間を調整して3号を維持している主婦は、“残る時間”などを考えれば、さすがに今から「ダブル厚生年金」を狙うのは無理だ。しかし、「ワン・ハーフ厚生年金」なら十分狙える。今の50代女性は学校を出てから結婚するまで会社で働き、数年~十数年の厚生年金歴をすでに持っている人が多い。それを土台に積み上げていけばいいのだ。
折しも、これまで主婦の労働に対して、いくつもの「壁」の存在が指摘されてきたが、それらが国の支援などで次々に崩れつつある。
これより高いと所得税を支払う必要が出てくる「103万円の壁」は、後述する、国がつくった老後資金への積み立て投資を始めれば簡単に回避できる。
これともう一つの税金の壁、夫が配偶者特別控除を満額受けられなくなり始める「150万円の壁」は、まさに「今」の家計か「将来」の年金のどちらを選ぶかの問題だ。夫婦で納得が得られれば壁はなくなる。
社会保険(厚生年金と健康保険)の壁では、従業員501人以上の企業で働くなど一定の条件を満たすと加入が義務付けられる「106万円の壁」が16年にできた。非正規で働きながら国民年金に加入している人らに厚生年金加入を促す政策で、この先、適用企業をどんどん増やすことが決まっている。来年10月からは「101人以上」の企業、24年10月からは「51人以上」に広げ、いずれはすべての企業に適用される見込みだ。つまり、どこで働くかは関係がなくなってくる。
すると残るは、夫の扶養であり続けるための条件、冒頭のAさんが気にしていた「130万円の壁」になる。先の井戸さんが言う。
「確かに夫の扶養は楽な部分がありますが、夫の稼ぎや健康状態に自らを委ねることになるので、けっこうリスクが高くなる気がします。とにかく将来何があるかわからないので、よほど資産がある人以外は共働きを選ぶのが安心できると思います。また、厚生年金の加入者を増やしていくのが国の政策ですから、その船に乗らない手はありません」
(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2021年7月2日号より抜粋