お金の専門家は、こうした女性たちに積極的な共働きを勧める。女性の老後資金に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の井戸美枝さんが、
「女性は長生きで、半分の人は確実に90歳まで生きると思っておいたほうがいい。50代以上になって自分の時間ができたのなら、働いてお金を稼いで年金を増やしたほうがいい」
と言えば、同じく女性のお金に詳しいFPの丸山晴美さんも、
「お金はさかのぼってため直すことができません。だから気づいたときがやり始めるときです。今の50代は子供を産むのが早く、子育てを終えてからの時間が長い傾向にあります。50歳代前半だと70歳まで20年近くあります。老後資金づくりに生かさない手はありません」
と背中を押す。
人生最後の「ためどき」で、主婦が貢献できるのはズバリ「共働き」なのだ。
共働きが老後に絶大な威力を発揮するのは、次のような比較をするとよくわかる。
厚生労働省が標準的な年金額として挙げているいわゆる「モデル世帯」(平均的な収入で40年間会社で働いた場合の老齢厚生年金9万円と、2人分の老齢基礎年金<満額>=1人当たり6.5万円)を例にとろう。
モデル世帯は事実上、専業主婦世帯を指し、その世帯年金額は月額「22万円」(夫15.5万円+妻6.5万円)だ。一方、完全共働き世帯として、両方がモデル世帯の老齢厚生年金をもらえる夫婦を想定すると、世帯年金額は同「31万円」(共に15.5万円)に増える。そして、その中間として、妻が夫の半分の老齢厚生年金をもらえる世帯も考えると、世帯年金額は同「26.5万円」(夫15.5万円+妻11万円)になる。
この3組の夫婦が20年間、年金をもらい続けた場合の累計額を比較した。専業主婦世帯は5280万円にとどまるのに対し、完全共働き世帯は7440万円にも達する。実に2千万円もの差だ。中間世帯はその中間の6360万円である。
老齢厚生年金で比べると、完全共働き世帯は2人分だから「ダブル厚生年金」といえ、中間の夫婦は1.5人分で「ワン・ハーフ厚生年金」と呼べるだろう。