特に悪評ふんぷんなのは、東日本大震災後に創設された「復興特別所得税」の転用だ。まず所得税に税額1%を上乗せする新たな付加税を課し、そのうえで復興特別所得税の税率を現行の2.1%から1%引き下げる。復興財源に影響が出ないよう、37年までの課税期間を最長13年延ばすという姑息な手段だ。
経済学者の浜矩子・同志社大学大学院教授はこう憤る。
「被災地の人々の神経を逆なでする感覚の鈍さに、唖然とするというほかない。課税期間を延長するから総額は変わらないのでいいでしょうという言い訳がさらに怒りを買うことに思いが至らない想像力の欠如が、また一段と許せません」
復興特別所得税は旧民主党政権下の11年11月、復興財源として創設された。逢坂氏は当時、総務大臣政務官として制度設計に関わった。
「被災地のみなさんに様々なお叱りを受けながら議論をして決めていきました。それをぶん捕るように防衛費増額の財源に充てるというのは、言語道断です。いくら何でも筋が悪すぎるし、無責任極まりないと思います」
今回、戦後初めて防衛費のために建設国債を充てるという“禁じ手”も使う。23年度から1.6兆円の発行に踏み切る。建設国債は道路や橋、港湾施設など公共事業の財源に充てるために発行される国債だ。それを自衛隊の隊舎や倉庫などの施設にも使えるというアクロバティックな理屈でゴリ押しした。浜氏がこう解説する。
「将来、国民のための資産が残るような投資なので一時的に借金をしてもいいというのが建設国債の趣旨です。自衛隊施設にも使えるという理屈は通りません。それより建設国債で国防関係の支出を賄うという前例をつくると、艦船や戦闘機など武器調達にも使えるという道を開いてしまう可能性がある。安倍晋三元首相が生前、提唱していた『防衛国債』が実現してしまう恐れがあるのです」
■軍費膨張させた戦前の特別会計
日本がNATO(北大西洋条約機構)と歩調を合わせ「GDP比2%防衛費」へ邁進すれば、中国、北朝鮮、ロシアなど近隣諸国との緊張を高めるばかり。浜氏が続ける。