
「私がいま一番望むことは、なぜ夫が死に追い込まれなければならなかったのか、その原因と経緯を明らかにすることです」
6月24日午前10時過ぎ。東京・有楽町の日本外国特派員協会でそう訴えるのは、2018年3月に自死した財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)の妻、雅子さん(50)。紺のブレザーを着て、遺影を前に置き、マイクに向かった。
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる、財務省の公文書である決算文書改ざん問題。2日前に、俊夫さんが職場で改ざんの経緯を書き残した「赤木ファイル」が開示された。あるのかないのか存否すら明らかにしてこなかったファイルだった。
全518ページ。雅子さんは、ファイルを代理人弁護士の事務所で受取り、自らハサミで切って開封した。第一印象は、
「黒塗りが少ない」
コピーだが、「私の元に帰ってきてくれた」という感じたという。
ファイルの所々には、手書きのメモも残っていた。雅子さんは言う。
「夫の字だとすぐにわかりました。夫が苦しい立場に追い込まれながら、赤木ファイルを残してくれたのだと思うと涙が出そうになりました」
ファイルには、雅子さんが知らなかった多くの事実が記載されていた。夫は、具体的に説明もなく、反対しても一方的に改ざんされて苦しんでいたことがわかったという。
改ざんを主導した、財務省理財局長だった佐川宣寿氏が、改ざんを指示したとするメールもあった。だが、佐川氏の指示がどのように俊夫さんまで関わったのか具体的な経緯は明らかになってなく、佐川氏や理財局内部のメールは開示されていない。
「佐川さんからの指示がどのように夫までつたわったのか、具体的な経緯は明らかになっていません」
雅子さんが会見で特に強調したのが、再調査と麻生太郎財務相の責任問題だ。麻生財務相には、こう訴えた。
「麻生さんは部下である夫が死に追い詰められて3年以上たつのに、仏前に手を合わせに来ることも再調査を提案することもなく、辞任せず、財務大臣を続けています。もし部下のことを思う心があるなら、二度と部下が同じような死に追いつめられように何らかの行動を起こすべきではないでしょうか」