■一瞬で人生観を変える

 竹本さんの座右の銘は「疾風に勁草(けいそう)を知る」だ。

「人生も会社経営も強い逆風にさらされる試練のときってありますよね。そうした苦難にさらされたときに初めてその人の真の強さがわかる、という意味です。いざというとき、前向きにしっかりと地に足をつけて歩んでいける強さを持った人間になりたい、と思っています」

「絶対にあきらめない駅」が誕生したのは18年。銚子駅のネーミングライツパートナーの2社の精神が、経営危機を乗り越えてきた銚子鉄道にも重なる、と命名を決めた。竹本さんは「この言葉はすべての銚子電鉄社員の心意気を示すもの」だと言う。

「どこかに突破口があると信じて行動することが、『絶対にあきらめない』という言葉の具現化だと思っています」

 竹本さん自身、社員の先頭に立って行動してきた。その一つが運転士免許の取得だ。12年に社長に就任した竹本さんは運転士の負担が大きいことを知り、運転士免許の取得を決意。技能試験でつまずいたが、3度目の挑戦で16年に合格した。コロナ禍までは通常の運転シフトに加わり、減便中の今は貸し切り列車の運転を主に担当している。

 竹本さんにとって言葉は「生き物」だと言う。

「言葉は一瞬で人生観や生きざまを変えることができる、まさに生き物です。言葉に救われて生きてきました」

 どれだけ厳しい局面でも悲観してはいけない、解決策は必ずある、と竹本さんは力を込める。

「だからあきらめなくてもいい、あきらめちゃいけない」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2022年12月12日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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