女性の検察官、裁判官は増えているが、弁護士は20%以下と低いままだ。
「検察官や裁判官は公務員であるため、育休や産休があり、安定した職を求める女性にとって魅力があります。さらに、今は国を挙げて女性の活用を推進しており、司法修習中に女性は一定程度検察官や裁判官にリクルートされてしまいます。もともと女性合格者の数が少ないので、相対的に女性の弁護士コミュニティへの参入が少なくなる難しさがあります」(石田教授)
日弁連は02年に「ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革の実現をめざす決議」を採択し、男女参画推進に向けて踏み出した。16年からは女性法曹の裾野を広げるため、中高の女子生徒を対象としたシンポジウムを開催。全国の法科大学院を会場に、女性法律家による講演や懇親会を開いている。
「女性法律家がいきいきと働く姿を知って、法曹界は男性社会だという先入観を捨ててもらうのが狙いです。このシンポジウムがきっかけで法学部に進学した女性学生もおり、種まきは大事だと実感しました」(倫子弁護士)
ほかにも、セクハラ相談窓口の設置、育児期間の日弁連会費の免除など、性別にかかわらず働きやすい環境整備に取り組んでいる。
女性弁護士として活動する佐藤暁子弁護士は「弁護士の多様な働き方をもっと知ってほしい」と話す。暁子弁護士は司法修習の前に、カンボジアで日本法講師として働いた。
「当時のカンボジアは内戦後、法の整備を行っている段階で、ODA(政府開発援助)の一環として日本人弁護士がカンボジアの法曹の育成や起草支援を実施しており、その様子を見学することができました。カンボジアの経験は弁護士という仕事のイメージを広げ、その後のキャリアを考える上で大きな影響を受けました」
暁子弁護士は、セクハラやパワハラなど企業活動に関わる人権、精神障害者の人権をテーマに取り組んでいる。自身の経験から、女性は弁護士に向いているのではないかと言う。
「もちろん個人のパーソナリティーは大きいのですが、男性社会の中でマイノリティとしての経験や、性差別を受ける対象としての痛みも知っている女性だからこそ、社会での弁護士の役割をより実感し、依頼者に寄り添うことができる場面もあると思います」
佐藤倫子弁護士は女性法曹が少ないことで「司法の信頼を損ねる」と危惧する。
「司法は社会の重要なインフラです。司法を担う者に偏りがあると、判断にも偏りが出てくるかもしれない。司法の信頼を獲得するためにも、女性法曹者を増やし、司法におけるジェンダー平等を実現すべきだと思っています」
(文・柿崎明子)