11月28日に敗血症で亡くなった俳優でタレントの渡辺徹さん。昨年、芸能生活40年を迎え、61歳という若さだった。おしどり夫婦として知られた妻の榊原郁恵さんとの結婚30年の節目となった2017年に、そろって週刊朝日のロングインタビューに答えた。家族として、「プロ同士」として、互いを尊敬し合う夫婦の素顔とは。当時の内容を一部抜粋して紹介する。
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――初対面から2年後。刑事ドラマで活躍していた夫は、今度は医師の役で妻と共演することに。
夫:あのころのテレビドラマって、今と違って長いんですよ。半年ぐらい、共演者は撮影所でずーっと一緒。
妻:みんな、本当の家族みたいに仲良くなってね。
夫:第一印象が良くなかった分、下心がなかったのも良かったんでしょうね。良く思われたいとか好かれたいなんて思わなかった。
妻:彼はすごくオープンな人で。隣のスタジオの他のドラマチームと仲良くなっちゃって、そっちの打ち上げに参加したり。
夫:それでものすごく怒られたこともあったよね。
妻:そう! この人、酔っぱらって真っ赤な顔で収録に現れたんですよ! それも手術のシーンなのに。
夫:ふらふらで、立ち位置に立てないの。
妻:スタッフさんたちは彼の性分を知ってるから「しょうがねえなー」「これじゃ、アップは撮れないぞ」なんて、笑ってくれたけど……。
夫:結局その日は撮影中止。
妻:私はそれが許せなくて。
夫:仕事を何だと思ってるんですかっ!ってね。メイクルームで烈火のごとくですよ。
妻:別にほっといたってよかったんでしょうけど……なんでだか、ムキになれる相手だったんですよね。
夫:でも、一緒に仕事をしたり彼女の舞台を見たりするうちに、どんなことにも全身全霊、すごい人だなあと。同業者として尊敬するようになりましたね。
――「何でも話せる人」から必要な存在へ…
夫:僕にとっても彼女は、本音が言えて、言い合いもできる。戦友みたいな感じでした。好き・嫌いというよりも、必要な人。
妻:なんだか美談っぽい方向へ向かってますけどね。