だが現時点でエンゼルスが今季を諦めて移籍市場で売り手に回るという話は出ていない。それとは対照的に、46勝48敗でナ・リーグ中地区4位のカブスはすでに主力放出に動くことを明言した。同地区首位のブルワーズから9.5ゲーム差、ワイルドカードでは圏内から8.0ゲーム差という状況はエンゼルスと大差なく、主力の多くが今季終了後にフリーエージェントとなる条件も同様だが、決断の早さには明確な違いがある。
実際にカブスは昨オフにドジャースから移籍したばかりだったジョク・ピーダーソン外野手を15日にブレーブスへトレード。ブレーブスの若手有望株ランキング12位だった長距離打者ブライス・ボール一塁手を獲得した。今後も元リーグMVPのクリス・ブライアント三塁手やアンソニー・リゾ内野手、ハビエル・バエズ内野手らの放出が有力視されている。
もちろん、カブスのこの決断が必ずしも成功を約束されているわけではない。ボールら若手有望株が大成せずに低迷が長引く可能性もある。しかし中途半端に主力を残してもプレーオフに届かない可能性が高い以上、やるなら徹底的にというのも理にかなっている。エンゼルスに足りないのはこの断固たる決意、英語で言うところの「determination」なのだろう。
とはいえ、エンゼルスも昨オフにGMがペリー・ミナシアンに替わっている。ミナシアン新GMはブルージェイズやブレーブスでキャリアを重ね、特にブレーブスではGM補佐として低迷していたチームの再建に成功。若手選手の発掘や育成に定評があるとされている。果たしてエンゼルスはミナシアンGMの下でトレード期限で買い手に回ってプレーオフを目指すのか、それとも売り手として動いて再建への一歩を踏み出すのか。いずれにしても、ここ数年の煮え切らない状況から脱却できるドラスティックな改革を期待したい。(文・杉山貴宏)