出品者は、2019年に明月荘の取り壊しを担当した解体業者S。瞳さんらと明月荘をしのぶ座談会に同席していたSは、その際に一緒に撮影した写真をメルカリに掲載することで、さも関係者のお墨付きがあるかのように見せていた。ちなみに、グループサウンズの先駆者とは「ザ・リンド&リンダース」の宇野山和夫氏のことで、ジュリーらに明月荘を紹介して一緒に住んでいた。
写真の無断掲載や価格の釣り上げに対し、反応したのがファンたちだった。彼らが柱の所有権について問いただすと、Sは「買い取った不動産の一部」「買い取ったものではありません」などとあいまいな説明。不信感を抱いたファン有志はついに、共同での買い取りに踏み切った。以前からザ・タイガースの関連グッズを収集し、ファン向けに展示してきた中村さんのもとへ依頼が来たというわけだ。
「知り合いからメルカリ出品のことを聞いてびっくりしました。『売り物じゃありません』という怒りの書き込みもありましたが、あの柱はファンにとって“重要文化財”のようなもの。まさかうちが保管することになるとは思ってもみませんでしたが、買い取られた方から『ファンのために展示してほしい』と連絡があり、お預かりしました。おそれ多いですが光栄に思っています」
中村さんは、壁に掛けて展示できるように自費で額縁をつくった。
「ご希望の方には、予約していただければ無料で随時見学していただきたいと思っています」。アルディの住所は東京都港区白金台2‐16‐5。
Sに写真を無断掲載されて困惑していた瞳さんも、柱が保管されることになって安堵(あんど)しているようだ。
「まさかあの柱が売りに出されるとは思っていませんでした。価格が高額だったこともあり心配していたのですが、ファンの方たちが出資し合って展示することになったと聞いてありがたく思っています。中村さんの人柄や“タイガース愛”は僕もよく存じ上げているし、ふさわしい。行くべきところに行ったなと」