さらに、世帯類型で切り取ると、ひとり親世帯に大きな影響が出たことがわかった。休校前から休校期間の減少幅は、夫婦世帯や三世代世帯はそれぞれ1.3時間だった一方、ひとり親世帯は1.6時間だった。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林庸平・主任研究員は「調査は年収にフォーカスしているというより、より厳しい状況に置かれた子どもたちの状況を捉えたい趣旨だった」と前置きしたうえで、こう指摘する。

「休校期間中はオンライン学習も進んだ。さらに、タブレット端末があるかなど家庭のIT環境は収入と相関するのでそれも影響したのだろう。さらに、昨年行った調査の分析では、『親が子どもの面倒を見てあげられているかどうか』ということが大きく影響を与えていることもわかった。親が勉強や生活を細かく見てあげられているかの差が、休校下では直接的に出たのではないか」

■スクリーンタイムの制限 親も一緒にルールを作る

 ただ、各調査項目の増減幅を比較しても、その差は1日あたり数分から数十分だ。これをどう捉えればいいのか。

「休校期間が一番格差が広がっていた。しかし、休校が終わっても完全には戻りきらなかった。1日で見たらわずかでも、その差を足し上げれば大きい。早めにそうした子どもたちに支援策を進めないといけない」(小林さん)

 また、この調査は勉強以外でテレビやゲーム、携帯電話を使う時間を示す「スクリーンタイム」についてもアンケートをとった。世帯類型別にみると、もともとコロナ前からひとり親世帯は高水準にあったが、休校期間の増加幅は夫婦世帯の0.8時間増に対して、1.2時間増となり、大きかった。ここにも、親の関与の度合いが影響しているとみられる。

 勉強時間の確保とも密接にかかわるスクリーンタイム。親はどう向き合えばいいのだろうか。小児科医の半谷まゆみさんに尋ねた。

 所属する国立成育医療研究センターで半谷さんらが行ったアンケートによると、勉強を除いた子どもたちのスクリーンタイムは、コロナ前より長くなっている。1日4~6時間という子も多く、それ以上というケースもあるそうだ。そのうえでこう指摘する。

「生活を見直すには、子どもだけではなく、家族で一緒にルールを作れるといい。食卓ではスマホを触らない、寝室に持ち込まないといった決まりを作り、親も一緒に取り組む姿勢を見せることで、子どもに響くこともある」

 まずは大人が変わることが第一歩のようだ。さらに、こんなアドバイスも。

「小さい子では、時間を区切るうえで子ども自身に選択させるのが良い方法です。『どの番組を見るか決めていいから、それで終わりにしようね』などと交渉をしかけて、本人に選んでもらうと納得しやすいかもしれません」

 スクリーンタイムの増加はなぜ問題なのか。半谷さんがまず挙げたのが視力への影響だ。さらに、就寝時間の遅れや集中力の低下を招く可能性もある。ゲーム依存症のようになれば、医療機関との連携も必要になるという。最後にこんな提言をしてくれた。

「スクリーンタイムによる負の影響から守るには、子どもにわかりやすく説明し、親も一緒に取り組む努力が必要。また、行政には子どもも含めた啓発に力を入れてほしいと思います」

(朝日新聞記者・岩沢志気、松本千聖、田渕紫織)

AERA 2021年8月2日号より抜粋

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