
にもかかわらず提案されている寄付規制新法は、およそあらゆる寄付の一律規制案となっています。そのため、宗教法人に限らず、寄付が活動資金となっているさまざまな団体への影響拡大を抑えようとして、むしろ救済範囲が狭く使いにくい法案になっています。これが二つ目の問題です。なぜ一律規制に突き進むのか。その背景には、「宗教法人の問題にしたくない」「宗教法人が悪いのではなく違法な行為をする法人が悪いのだ」「だから宗教法人に限らずすべての法人を規制すべきなのだ」という理屈で、宗教法人規制を回避しようとする強い政治的エネルギーが働いています。そしてもちろん、このエネルギーの出元は、創価学会という特定の宗教法人の強い支援を受けている公明党と、公明党との選挙協力なしに議席も政権も維持できない自民党でしょう。
本来はまず、宗教法人法改正で今求められている献金規制をした上で、宗教法人に限らないカルト規制については中長期的な課題として取り組むべきです。
政府高官の一部からは、宗教法人法での寄付規制は政教分離違反になるという主張も聞こえてきますが、そんなはずはない。もしそうならば、宗教法人法の存在そのものが政教分離違反になってしまいます。今政府が進めている解散命令請求に向けた調査も政教分離違反と言われかねません。政教分離は、宗教法人と社会との軋轢(あつれき)を回避するために必要な規制まで禁止するものではないのです。
■政府案改善への「二つの方向性」
また、宗教法人法の改正は「信教の自由」違反になりかねないと言う人もいますが、正体隠しの伝道などはむしろ個人の「信教の自由」を害する行為です。団体側の権利保障ばかりを優先して「個人の尊厳」を守るための規制すら認めないのは、むしろ憲法の趣旨に反します。宗教法人といえども、伝道や献金要求など社会と接点を持つ場面において、他の権利とのバランスで規制を受けるのは当たり前。「聖域」であれど「治外法権」ではないのです。政権を支えている特定の宗教団体に特段の配慮をして、必要な規制ができない状態にあるのだとしたら、それこそがまさに政教分離違反の疑いありです。