(c)2021 RECTANGLE PRODUCTIONS-FRANCE3CINEMA-WILD BUNCH-SRAB FILMS
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 稽古はそれほどしませんでした。痛いシーンは稽古してもあまり意味がないと私たちは判断し、直感的に本能でやるのが一番いいということになったんです。でも、稽古してないから怖かったですね。ひょっとしたら失敗するかもしれない、そしたら監督をがっかりさせてしまうかもしれないと、私の中で恐れがありました。とはいえ、この映画ほど私は監督に寄り添ってもらったことはありません。本当にこれほど撮影現場で自由だと思ったことはありませんでした。オードレイ監督が温かく見守ってくれていました。この映画は低予算でしたが、監督は必要な時間を十分取ってくれました。私自身が居心地のいいような雰囲気作りもしてくれましたし、私だけが頑張って試行錯誤するのではなく、監督にサポートしてもらって一緒に考えるべき感情を作り出していくという形で作り上げました。ちょっと実験的な、何かを探し求めながら作り上げていくという雰囲気は心地良かったです。

──ヴァルトロメイは本作でベルリン国際映画祭のシューティングスター賞ほか、国内外で多くの賞を受賞。人生は大きく様変わりした。

 今私はロンドンにいて撮影の最中です。どういう映画か言えないのがつらいくらい。受賞していなかったら私なんか絶対出られなかったような作品なんですよ。そう思うと、受賞したことで扉がいっぱい開いた感じです。

 米国でもエージェントがつきましたし、これからどんどん世界のステージで活躍できる。そういう扉が開きました。私はそれを可能にしてくれたのが、とても重要なテーマを扱う本作だったことがすごくうれしく、誇りに思っています。フランスで公開されたのは去年ですが、1年経って日本でも公開される。この作品が歩みを止めずにどんどん道をまた切り開いてくれたらと思います。

 私には壮大な目標はありませんが、できればずっと俳優を続けていきたい。仕事が止まってしまうことがないことだけを願っています。

(聞き手/ライター・坂口さゆり)

週刊朝日  2022年12月9日号

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