時事通信は7月29日、五輪が盛り上がって当然だという風潮を「オリハラ(オリンピックハラスメント)」と報じ、警鐘を鳴らした。原田さんが大学生148人を対象にした調査でも、114人の学生が五輪への関心が「ある」と回答。ところが、
「学生から『これがいまバズっているから』と動画を見せられましたが、その選手が誰なのかまでは知らない学生がほとんどでした」(原田さん)
と関心の度合いはさまざまだった。さらに、オリハラなどの同調圧力に頭を抱える大人世代とは異なる問題があると、原田さんは言う。
「今の若い世代には同調圧力はほとんどありませんが、趣味の細分化が進んだことによる共通話題の少なさが悩みになっています。五輪やWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のような国家的な話題は、熱狂するものではなく便利なツールとして使おうと考える子が多くなりました」
■五輪の若者離れも懸念
64年五輪から半世紀以上が経ち、少子高齢化が加速。世界的な五輪の若者離れも懸念されている。今大会からスケートボードやサーフィンなどを新競技・種目として導入し、若い世代を取り込もうとしているが、大きな成果は期待できないと原田さんは見る。
「スマホを触っていれば、大半のことは満たされる。社会が成熟したことでアメリカのような個人主義に近づいています。『日本のおじさんたちは価値観が多様化していないから、五輪を見て話を合わせておこう』と合理的になったようにも見えます」
あの熱狂から57年。五輪の見つめ方には静かな変化が起きている。(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年8月9日号より抜粋