※写真はイメージ(gettyimages)
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 連日、盛り上がり見せる東京五輪だが、57年前の国民の熱狂ぶりとは違うようだ。若者の間で、五輪の捉え方や関心に変化が起きているようだ。AERA 2021年8月9日号から。

【写真】「軽すぎる五輪」が始まったのはこの瞬間から

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 朝日新聞が7月17、18日に実施した世論調査では、55%がこの夏の開催に反対と回答。19日には開会式の作曲担当者が過去のいじめ発言で辞任し、22日にはショーディレクターがホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を揶揄(やゆ)する表現を過去に用いていたとして解任された。

 こうした騒動によって、SNS上には「#東京五輪を中止せよ」のハッシュタグが相次いで投稿され、五輪への風当たりはますます強まったように思えた。

 しかし、である。視聴率調査会社のビデオリサーチによると、生中継された東京五輪開会式の平均世帯視聴率(関東地区)は56.4%。夏季五輪開会式では1964年東京五輪の61.2%に次ぐ高視聴率で、視聴人数は日本全国で推計7061万7千人に上ったという。

 あの日あの時間、五輪開会式を見ていたのは2人に1人──。つまり、2人に1人は他のことをしていた、ともいえる。

■間接的に五輪を楽しむ

「開会式も競技も見ていませんが、メダルを取ったり活躍したりしている選手のことはネットニュースでチェックしています」

 そう話すのは、都内の会社員女性(27)だ。スポーツへの関心がないことに加え、コロナ下での開催に不安があることから、五輪観戦には前向きになれないでいる。だが、

「お笑いコンビのチョコレートプラネットが開会式のピクトグラムパフォーマンスをまねした動画が、YouTubeで急上昇1位になっていたことは知っていますよ」

 と笑顔を見せる。

 この女性のように、間接的に五輪を楽しんでいるケースは珍しくない。若者文化に詳しいマーケティングアナリストの原田曜平さんはこう指摘する。

「五輪を見ているか大学生に呼びかけても、普段より返信が少なかった。ただ、興味がないと思っていても、いざ始まってみれば連日連夜テレビで放映されるし、テレビを見ない人でもSNSで情報が回ってくるので、情報はそこから得ることができるんです」

 開会式のピクトグラムもスケートボードのラフすぎる解説もSNSのトレンドとして日本中に広がった。海外選手が動画アプリ「TikTok」(ティックトック)にアップしたダンス動画は若者の間で大流行した。

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