今年2月に医療関係者から始まった新型コロナウイルスのワクチン接種。現在、国民全体の約4分の1、65歳以上の約7割が2回目の接種を終えている。そんな状況下で始まったのが「新型コロナワクチン接種証明書(以下、ワクチンパスポート)」だ。どのような効果と課題があるのか。
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ワクチンパスポートとは、ワクチン接種を「公的に」証明するもので、接種した本人が接種券を発行した自治体の窓口で申請すると受け取ることができる。
7月26日から始まったのは、海外渡航者用。入国時にワクチンパスポートを提示することで、防疫措置(入国時の待機、ウイルス検査など)が緩和される。現在、このワクチンパスポートが使える国や地域は、イタリアやオーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドなどだ(7月21日現在)。
一方、渡航した日本人の帰国や外国人の日本への入国に関しては、ワクチンパスポートがあっても、防疫措置(出国72時間前の陰性証明の提示や、14日間の待機など)は緩和されない。
このワクチンパスポートに期待を寄せるのが、日本経済団体連合会(経団連)だ。経団連が独自に設置した新型コロナウイルス会議は「ワクチン接種記録(ワクチンパスポート)の早期活用を求める」提言をまとめ、6月24日に公表した。背景にあるのは、経済の巻き返しだ。事務局の正木義久さんは、「このまま鎖国状態が続いたら、日本だけ取り残されてしまう」と焦りをみせる。
「中国や韓国のビジネスパーソンはすでにアジア各国に赴き、市場を広げている。対して、日本はオンラインで関係性を維持するのが精いっぱい。このままでは国内経済の低迷にとどまらず、海外での経済活動や国際交流においてダメージが広がるばかりです」(正木さん)
ワクチンパスポートの国内利用は、すでに海外で始まっている。フランスでは飲食店やショッピングセンター、飛行機などを利用する際にはワクチンパスポートにあたる「衛生パス」の提示が必要で、イタリアも8月上旬から飲食店や映画館での「グリーンパス」や「陰性証明」の提示が義務づけられる。