――感染者が増加の一途をたどるなか、ワクチン接種は特効薬となるのでしょうか。

 国民の7割がワクチンを接種しないと増加を抑えられないと言われています。日本はまだ4割。いま接種を急いだとしても、7割達成までにあと何カ月かかるのか。第5波のピークに歯止めをかける特効薬にはならないと思います。

 また、デルタ株は、ワクチンを接種しても感染する「ブレイクスルー感染」が世界中で報告されています。現状、ワクチン接種が進んだ後に流行しているのは主にデルタ株ですが、デルタ株だからブレイクスルー感染するのか、たまたまその地域で流行しているのがデルタ株なのか、まだわかっていません。

――南米由来の変異種ラムダ株が日本でも空港検疫で検出されました。もし市中に広がった場合、他の変異株と比べてどういった点を注視したほうがよいでしょうか。

 当研究チームで行ったラムダ株の実験では、ラムダ株もデルタ株と同じようにウイルスの感染力を増強させ、ワクチンで誘導された中和抗体に抵抗性があるという結果が出ました。

 ただ、デルタ株とラムダ株では、どちらのほうが危険かは不明です。ラムダ株は、主に南米で流行し、致死率が高いという情報もありますが、まだ研究が進んでいません。

――ワクチンを接種した人と未接種の人が混在しているなかで、ウイルスはどうのように生き残っていくのでしょうか。変異を繰り返し、ワクチンが効かない変異株も将来的に現れるのでしょうか。

 一般的に、細胞実験において、よく効く薬を適量入れると、ウイルスの増殖は止まります。しかし、中途半端な薬の量で増殖を半分くらい抑えると、ウイルスの増殖を一時的に抑えられたとしても、薬が効かなくなる変異を獲得して増殖していきます。これは、新型コロナだけでなく、どんなウイルスでも同じです。

 今のようにワクチンを接種した人と未接種の人がいるなかで、感染拡大している状況は、まさに、細胞実験と同じ状況が人の集団で起きているとも考えられます。免疫を持っている人と、持っていない人が混在してウイルスが広がっているということは、ワクチンで免疫を獲得した人の中ではあまり増えないけれど、そうではない人の中では増殖していきます。

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ワクチンが効かない変異株出現の可能性