ところがジャスティンの方は、身だしなみが良くて科学者タイプのイーロンには、まったく興味はなかった。彼女が暮らす女子寮の窓の下にオートバイを止めて、薄明のもと、彼女の名前を切なく呼んでくれる男性、つまりロミオ的なタイプが好きだったからだ。

 ロミオには程遠いイーロンだったが、愚直な押しの一手が功を奏してか、2人はデートを重ねるようになった。

「ノーを受け付けない男」。イーロンについて、ジャスティンは後にこう評した。一度こうと思ったら突撃するのはビジネスだけでなく、恋愛でも同様だった。

■双子の次は、三つ子だった

 イーロンが米ペンシルベニア大学に編入しても二人の恋愛は続いた。

 ジャスティンはクイーンズ大学を出ると1年間日本で英語教育に携わった。その後カナダに戻り、バーテンダーをしたりしながら小説に取り組み、大学院へ進むか考えていた。

 一方のイーロンは、スタンフォード大学院に入学したものの、2日で辞めると、オンライン・コンテンツの制作会社「Zip2」を創業。4年後に同社を、コンピュータ業界で急成長していた「コンパック」に売却し約25億円を手にしたイーロンは、インターネットの送金決済サービス「Xドットコム」を創業した。これが後にペイパルの母体となる。

 2000年に2人は結婚した。その2年後に大手オークションサイト「eBay」がペイパルを買うと、イーロンは約190億円を手に入れる。

 さて、eBayがペイパルを買った2002年に2人はLAに移り住み、最初の子供をもうけたが、わずか10カ月でこの子はこの世を去ってしまう。乳幼児突然死症候群だった。

 その後、2004年に、イーロンとジャスティンの間には双子が誕生。さらに2006年には3つ子が誕生している。

■亭主関白だった億万長者

 億万長者になったイーロンとジャスティンは、子供にも恵まれ、誰もが羨む特権階級の生活を手に入れていた。

 カリブ海の島で行われたグーグルの共同創業者でイーロンの友人のラリー・ペイジの結婚式に出席した時は、有名俳優に混じって歌手のボノまで参列していたし、ハリウッドのナイトクラブでテーブルに着くと、隣でレオナルド・ディカプリオがパーティをしていたということもあった。

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結婚後、変わってしまったイーロン