東京パラリンピックの陸上男子車いすT52クラスでメダル候補だった伊藤智也(58)が8月24日に記者会見し、大会直前の国際クラス分けの結果、障害の程度が軽いT53クラスに変更になったことを明かした。障害の程度が軽いクラスほど競技レベルが上がるため、伊藤は厳しいレースに臨むことになる。
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伊藤は会見で、
「この5年間、(T52の)400メートルを軸にすべてのトレーニングをしてきたので、(T52に)出られないというのは非常に無念」
と語った。
クラス分けは、障害や病気によって体の状態がさまざまな選手が参加するパラスポーツ独自のもので、競技の公平性を担保するために実施される。国際パラリンピック委員会(IPC)は大会直前のクラス変更を避けるため、2014年ソチ冬季大会以降は事前にクラス分けが確定した選手が出場するルールを導入した。だが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大による大会中止などの影響で、判定を受けられない選手が国内外で続出した。
伊藤は東京大会が1年延期されていなければT52で出場できたが、20年末にクラスの有効期限が切れた。自己免疫疾患の多発性硬化症であるため、コロナ感染の重症化リスクを避けようと海外大会に出場せず、IPCが特例措置で設けた今大会直前のクラス分け判定を受けることにした。
伊藤は「もちろんコロナがなく開催していたら、私はクラス分けを受ける必要がなかったわけですので、こういう結果になったことは非常に残念に思います」と言った。一方で、前向きな言葉も絞り出した。
「この大会の僕の存在意義は間違いなく400メートルにあったというふうには思います。今回、残念ながらT52の400メートルには出られないということではありますけれども、これまでたくさんの方々に支えられて私はここにおります。みんなで1冊の本を作ってきたとするならば、たかが1ページイレギュラーがあったなということや、と思います」