ということが僕の健康と時間の「思想」(笑)でした。鮎川さん、こんなもんでよろしいでしょうか。僕は健康と時間の因果関係(こんなもんはどうでもいいんですが)について、イマジン(想像)してみましたが、超長寿者のセトウチさんなら何とおっしゃいますでしょうか。「愛あれば健康あり」とおっしゃるかも知れません。

 時間を忘れることは健康原理のひとつだと思います。時間に縛られることは自由の放棄ですから、死を考えることに結びつきます。老齢を上手に生きた人は時間を忘れます。従って頭から自然に死を排除しています。死を待ち受けたり、死を恐れる生き方は生命期限に縛られた人間だけです。死の概念の乏しいなどは死が迫っていても死ぬ瞬間まで健康でいられるんじゃないでしょうか。本当に健康な人は、気がついたら死んでいた、と思う人ではないでしょうか。あやかりましょうよ。

■瀬戸内寂聴「バカなことを考えるのが長寿のヒケツです」

 ヨコオさん

 今年もコロナにおびやかされながら秋をむかえました。お盆が過ぎると、時の足音が急速になり、たちまち年の瀬がやってきます。

 私はこのところ反って体調がよく、ほとんど眠らないで原稿を書いてもビクともしません。よく働き、よく眠り、よく食べています。秘書のまなほが、よく笑わせてくれるので、仕事の合間にはゲラゲラ声をあげて笑っています。

 寂庵の内に引きこもり、一歩も門の外へ出ません。寂庵の真ん前の畑地を地主が売って、そこに三軒、家が建つらしいですが、それも話を聞くだけで、見てもいません。売るときは話してくれと、何度も言ってあるのに、地主のおじさんは他の人に売ってしまったようです。

 百年生きてきて覚えたことは、一応手に入れた土地は、縁があったということだから、絶対、手放すなということです。

 もう今夜死ぬか分からない寿命になって、新しい土地が欲しいなど思う私は、まさに真正の老人ボケになっているのでしょう。

暮らしとモノ班 for promotion
【10%オフクーポン配布中】Amazonのファッションセールで今すぐ大活躍する夏のワンピやトップスを手に入れよう!
次のページ