中日の根尾昂(c)朝日新聞社
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 中日の公式YouTubeチャンネルで話題を呼んでいる動画がある。ある選手が投球練習を行っている内容で、糸を引くような直球を投げ込んでいる。その選手は投手ではない。現在ファームで調整中の根尾昂だ。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 カメラが映し出した映像はファームの選手たちが練習を終えたナゴヤ球場。高卒2年目の岡林勇希がマウンドに立って投球を披露した。非凡な野球センスを兼ね備えた岡林は菰野高で投打の「二刀流」として活躍している。最速153キロを記録した右腕はプロで野手として入団したが、その投球は迫力十分。しかし、左のバッターボックスに立った工藤隆人2軍外野守備走塁コーチから「(捕手が)座った途端、球めっちゃ遅なった」と指摘され、「コントロール重視です」と苦笑いを浮かべた。続いて投球を披露したのが根尾だった。捕手を座らせると、きっちり制球された糸を引くような快速球が次々にキャッチャーミットにおさまる。近くで見ていた仁村徹2軍監督が思わず「全然違うなあ」を唸ると、マウンドの背後で見守った岡林も「違うっすね、甲子園優勝ピッチャーは」と脱帽した。

 根尾は大阪桐蔭で2年春、3年春、3年夏と全国制覇を達成。高校生離れした打撃だけでなく、最速150キロの直球を武器に主戦投手を務めている。根尾はプロ入り時に「野手1本」で勝負することを決断したが、「投手・根尾」の評価はスカウト陣の間で割れたという。

「野手として根尾を見ていた球団が多いのは間違いありません。ただ、『投手として大きな可能性を秘めている』と評価しているスカウトもいました。根尾の一番の武器は打撃でも足でもなく、肩の強さです。制球は良いと言えませんが、バランスの良いフォームから投げ込まれる直球はカット気味で打ちにくい上に威力が凄かった。変化球のスライダー、カーブはまだまだ精度が低かったですが、伸びしろは十分にあった。今回の映像を見て驚いたのが、高校時代と投球フォームが変わっていなかったことです。ブルペンで投げていないとどうしても野手の球質になってしまうんです。岡林が捕手を座らせて球が伸びなくなったのは普段ブルペンで投げていないから仕方ない。でも根尾は野手としてプレーしている現在も、捕手の手元で伸びる『投手の球』を投げていた。投手としての体の動かし方、指先の感覚が身についているんでしょうね」(アマチュア担当記者)

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