ポールの持つスター性は、まずはありのままを演じてみて、そこから少しずつ変化することでまとえるようになるのかな、と思います。
芸能活動を続けていくうえでの“新しいオーラ”がもらえるんじゃないか、という期待もあるんです。自分が「こう演じるといいだろう」と思ってやっていることが、稽古を通して時に否定されることで、新たな一面を引き出してもらえるかもしれない。この役は、すごく繊細でカリスマ性の高い役なので、そんなオーラをまとえるようになったら無敵になれるんじゃないかな、と思うんですよね(笑)。
■蜷川幸雄の言葉を胸に
テンポの良い会話のやり取りからポールの内面が浮かび上がる。上演時間は2時間を超え、せりふの量も膨大だ。
会話劇は、相手のせりふも覚えなければいけない。出ずっぱりなうえ、せりふの量が多いことにも気づいてしまって、これは大変だなと(笑)。こんなに覚えなければいけないのは初めてかもしれません。
せりふは風呂の中で覚えることが多いです。ほかの誘惑がないから集中して覚えられる。長風呂しながら読んで、気づくと台本がシワシワになっています。
「とりあえず、今日はここまで覚えよう」と読み始め、少しずつ増やしていく。稽古に入るまでにせりふは全部覚えたほうがいい、というのは、以前お世話になった蜷川幸雄さんに言われた言葉です。稽古に入る前にせりふをしっかり覚えることができたら、それだけ稽古でスタートダッシュができるようになる。
蜷川さんに言われて、「確かにそうだ」と思うようになり、いまもできる限り守るようにしています。
「冬眠する熊に添い寝してごらん」(2014年)や「青い瞳」(15年)で共演した勝村政信や中村獅童からも、強い影響を受けた。
稽古場を離れても一緒に練習していただいて、そのときの経験が僕のなかでお芝居の基礎になっています。中村さんには、舞台に立って「自由」に演じていくことの面白さを教えてもらいました。芝居を始めた頃は、「言われた通りに動かなきゃ」「次はこう動かなきゃ」という考えに頭が支配されることが多かったのですが、そうすると視界が狭くなってしまう。