■20代は不真面目な俳優だった

 鈴木本人は英検1級や世界遺産検定1級などクレバーな一面を持ち、一児の父でもある。そのクリーンなイメージから「いい人」を演じるほうが本来の姿に近いのかと思いきや、「若いときはセリフも覚えず、その頃に仕事した人からは一切オファーがない」と自ら認めており、意外な横顔もあるようだ。スポーツ紙の芸能担当記者はこう語る。

「先日、『ぴったんこカン・カン』(TBS系)で明かしていましたが、20代のころは相当イキっていて、本人いわく『ちゃんとしたやつではなかった』とか。今の鈴木さんは、役に合わせて10~20キログラムの体重増減もいとわないほど完璧主義者というイメージなので、この話はかなり意外でした。ブレークのきっかけとなったのは2014年前期の朝ドラ『花子とアン』でヒロインの夫を演じたとき。とても精悍な役柄でしたが、その直後に公開された映画『俺物語!!』や『HK 変態仮面』など漫画原作を忠実に映像化した際の憑依ぶりも話題になりました。彼の代表作である『西郷どん』での役作りもそうですが、フォルムから忠実に仕上げて役に没入するのが鈴木さんのスタイル。今のような大ブレークをする前から、善悪含めどんな役にもなり切るカメレオンぶりは、ほかの役者陣も一目置かざるを得ない存在だったようです」

「孤狼~」と同じ白石和彌監督の映画「ひとよ」で鈴木は吃音症の役を演じたが、このとき白石監督は吃音の研究者と真剣に役作りに励む姿に感動し、鈴木の起用を決めたという。TVウオッチャーの中村裕一氏は、鈴木亮平の魅力をこう分析する。

「『TOKYO MER』はこれだけヒットしたので、当然、続編もしくはスペシャル特番の検討もされているでしょう。最終回の結末次第だと思いますが、彼が演じる主人公・喜多見の勇姿をまだまだ見たい視聴者は多いはず。鈴木さんは役に対するアプローチは真剣そのもので、ボディーコントロールなど当たり前。その上で俳優として何ができるかというプラスアルファを彼なりに黙考し、提示してくれる姿はまるで哲学者のようです。また、そういった苦労をさらっと語り、ことさらアピールしないところも多くの人たちから愛されている理由だと思います。彼の活躍は決して日本だけにとどまらないレベル。いろいろな意味でスケールの大きい彼が、世界というもっと大きなフィールドで活躍する可能性も少なくないでしょう」

 憑依型俳優の最高峰として見る者を圧倒し続ける鈴木亮平。英語も堪能なだけに、彼が日本を飛び出す日もそう遠くはないだろう。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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